2019年の河井克行・案里夫妻の大規模買収事件で現金を受け取った当時の市長らが辞職した広島・安芸高田市。

 2020年に当選した石丸伸二・新市長は、就任当初からSNSへの投稿に積極的。そこで批判された市議会との対立が深まり、全国的な注目を浴びた。

 その石丸市長が東京都知事選への立候補を発表したタイミングで公開されるドキュメンタリー映画に、ジャーナリスト相澤冬樹氏は何を見たか?

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再生900万回超の地元テレビ局制作番組が映画に

 あんなあ、田舎には田舎の“しきたり”っつうもんがあんだよ。京大出て世界を股にかけて活躍した銀行員か何か知らんけど、ちったあわしらの言い分にも耳を傾けてもらわにゃ。エリートさんが上から目線でくるんじゃけえ、たまったもんじゃない。

 映画に出てくる議員さんたちのホンネはこんなところだろうか。広島県安芸高田市に颯爽と現れた石丸伸二市長(当時37歳)と、市議会の確執を描いた『#つぶやき市長と議会のオキテ【劇場版】』。

石丸伸二・安芸高田市長 © 広島ホームテレビ

 劇場版とある通り、元は地元の広島ホームテレビが制作したテレビ番組だ。放送後、アーカイブ配信の再生が900万回を超え、キョンキョンこと歌手で俳優の小泉今日子さんもYouTubeで観たという。

 ネットで注目の話題作に新たな要素を加えて再構成し、1時間46分の映画に生まれ変わった。

ツイッター(現X)の発信が招いた軋轢

 広島県北部の山間にある過疎の市の地方政治が、なぜこれほど注目を集めたか? それはひとえに市長の“つぶやき”による。選挙中も就任後も石丸市長はツイッター(現X)で市の施策や議会の動きについて発信し続けた。

© 広島ホームテレビ

 それが早々に議会との軋轢を招く。「いねむり」騒動だ。市長が議会で答弁中、議場に響き渡る大いびき。その日の“つぶやき”は…、

〈いびきをかいて、ゆうに30分は居眠りをする議員が1名〉

 これに議会がカチンときたのか、数日後の“つぶやき”では、

〈敵に回すなら政策に反対するぞ、と説得?恫喝?あり〉