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 樋田氏は他にも、映画の感想として「映画には出てこなかったが、武装闘争の議論に与しなかった一般学生が大勢いたこと」「革マル派が支配していたキャンパスの、想像を超える息苦しさ」「革マル派の管理された暴力の恐ろしさ」などを語った。一方の代島監督は、書籍に収録された、樋田氏と大岩圭之助氏(当時の革マル派で第一文学部自治会副委員長。現在は文化人類学者で「辻信一」名で『ブラック・ミュージックさえあれば』などの著書がある)の対談の中で、大岩氏が「許してください」と言った一言に感銘を受けたことなどを述べた。

初日舞台挨拶。代島治彦監督(右から2人目)、鴻上尚史氏(左から3人目)と俳優陣

 前日の25日(土)に行われた舞台挨拶では、鴻上尚史氏、川口大三郎君を演じた俳優の望月歩、革マル派の女性闘士を演じた俳優の琴和などが登壇。鴻上氏は「この映画は、内ゲバのパンドラの箱を開けてしまった」と述べた。安保闘争、三里塚闘争などの新左翼、学生運動に比べて、セクト間の内ゲバの証言は皆無に近く、関係者が固く口を閉ざす状況が今も続いている。

 代島監督も「この映画が嚆矢(こうし)となり、関係者が少しずつ真実を語り、広く歴史が検証できる状況が作られることを期待しています。そのために多くの世代の方々に観ていただきたい」と映画公開の意義を語った。

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左から、俳優の琴和、望月歩、演出家の鴻上尚史氏の3人

『ゲバルトの杜~彼は早稲田で死んだ~』
STORY
 約50年前の1972年11月8日、早稲田大学キャンパスで一人の若者が殺された。第一文学部2年生だった川口大三郎君。自治会を牛耳り、早大支配を狙う新左翼党派による凄惨なリンチが死因だった。
 学生運動終焉期にエスカレートした“内ゲバ”の嵐。その死者は100人を超える。理想に燃えた当時の若者たちが、革命という名の下に肯定していった「暴力の論理」を今、解き明かす――。

STAFF&CAST
監督・企画・編集:代島治彦/原案:樋田毅『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』/出演:池上彰、佐藤優、内田樹、樋田毅ほか/〈劇パート〉脚本・演出:鴻上尚史、出演:望月歩、琴和ほか/2024年/日本/134分/配給:ノンデライコ/公開中(各映画館での公開情報は公式HPにて)