文春オンライン

「私たちの時代の闘い方の欠陥が描かれている」元日本赤軍・重信房子も納得の“内ゲバ”映画の自問<新左翼運動は、なぜ道を誤ったのか?>

映画『ゲバルトの杜 ~彼は早稲田で死んだ~』

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 映画, 社会, 昭和史

note

 好評発売中の『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』(樋田毅著、第53回大宅壮一ノンフィクション賞受賞)を原案にしたドキュメンタリー映画『ゲバルトの杜 ~彼は早稲田で死んだ~』(代島治彦監督)が、5月25日(土)よりユーロスペースほかにて公開される。

リンチ死を機に吹き荒れた“内ゲバ”の犠牲者は100人超

 学生運動終焉期の1972年11月8日、早稲田大学文学部構内で一人の学生が、革マル派の学生に凄惨なリンチを受けた末に殺された。

 この「川口大三郎リンチ殺害事件」をきっかけに一斉に蜂起した一般学生は敗北。やがて新左翼党派間の暴力はエスカレートし、犠牲者が100人を超える凄まじい“内ゲバ”の嵐が吹き荒れた――。

ADVERTISEMENT

殺された川口大三郎さんは当時20歳 ©「ゲバルトの杜」製作委員会(ポット出版+スコブル工房)

 本作は、当時は口を閉ざしていた当事者たち+池上彰氏、内田樹氏、佐藤優氏が“内ゲバ”の不条理を語り、鴻上尚史氏の演出劇で立体的に炙り出す、悔恨と鎮魂のミクスチャー・ドキュメンタリーだ。

当時の貴重な映像や池上彰らの解説も

 公開中の本予告編動画では、大勢の革マル派の学生らに捕えられ、「お前は中核派のスパイだ」と詰問される川口大三郎さん、そこからリンチ殺人へと至る暴力を描く劇パートと、川口事件を知る当事者たちの証言、当時のキャンパスを映した貴重な映像、またノンフィクション作家・樋田毅氏が原案となった書籍に込めた思いや、池上彰氏など識者たちの解説が紹介されている。

劇パートで女闘士を熱演した琴和 ©「ゲバルトの杜」製作委員会(ポット出版+スコブル工房)

 文庫『彼は早稲田で死んだ』の帯に推薦文を寄せた思想家の内田樹氏は、動画内で「大義名分が与えられると、容赦なく暴力を振るうことができる人間が、こんなに沢山いる」と学生運動を目の当たりにした衝撃を語っている。

思想家・内田樹氏は三里塚闘争の経験者 ©「ゲバルトの杜」製作委員会(ポット出版+スコブル工房)