“懲役20年”の重信房子の懺悔
また、ジャーナリストの田原総一朗氏、フリーアナウンサーの久米宏氏といった多くの著名人が推薦コメントを寄せている。元日本赤軍・重信房子氏の「この映画には 、革命のために尊厳ある生命を犠牲にした、私たちの時代の闘い方の欠陥が描かれている」というコメントは、ひときわ重い。
重信氏は、「国際根拠地論」に基づいて世界各地で多くのテロ事件を引き起こした日本赤軍の元最高幹部(日本赤軍はすでに解散)。オランダ・ハーグのフランス大使館占拠事件を共謀し、殺人未遂の罪などで起訴、懲役20年の実刑判決を受け、服役した。
刑期を終えて出所した後、新聞の取材に「武装闘争を選択したことは未熟だった。観念の“正しさ”に頭が占拠され、人と人との関係や痛みに無自覚だった。身勝手から間違った路線に進んでしまった」と、深く悔いる言葉を残している。
運動に加わった大半は「ふつうの人々」だった
かつて自由と解放を求め、また理想の社会の建設のため〈革命〉を夢見て運動に加わった人々の大半は、「ふつうの人々」だった。そんな人々が、ほんの少しのきっかけでどれほど暴力的になれるか、またその暴力は際限なくエスカレートし得るかを、本作は見事に示している。
社会が再び“正しさ”に支配され、“正しさのための暴力”が正当化されそうになるとき、我々はそれにどのように打ち克つのか――この社会に生きている限り、誰もが常に、そのことを問われている。
『ゲバルトの杜~彼は早稲田で死んだ~』
STORY
約50年前の1972年11月8日、早稲田大学キャンパスで一人の若者が殺された。第一文学部2年生だった川口大三郎君。自治会を牛耳り、早大支配を狙う新左翼党派による凄惨なリンチが死因だった。
学生運動終焉期にエスカレートした“内ゲバ”の嵐。その死者は100人を超える。理想に燃えた当時の若者たちが、革命という名の下に肯定していった「暴力の論理」を今、解き明かす――。
STAFF&CAST
監督・企画・編集:代島治彦/原案:樋田毅『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』/出演:池上彰、佐藤優、内田樹、樋田毅ほか/<劇パート> 脚本・演出:鴻上尚史、出演:望月歩、琴和ほか/2024年/日本/134分/配給:ノンデライコ/5月25日公開