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迷いない線と色が、感情を揺さぶってくる
アートとは何か。その定義はいろいろあろうけれど、ひとつにはこんな言い方ができると思う。
「ある人間の強い意思に発してつくられたなにものか。かたちや素材を問わず、それはすべてアートと呼べる」
この考えを当てはめるとすれば、のんが生み出した絵やオブジェの数々、そして空間全体は、高いレベルで要件を満たす優れたアート作品だ。
会場にいると刺激的なビジュアルを次から次へと浴びることになるので、自在で多様な発想力にまずは目を奪われるが、それだけじゃない。1点ずつの作品とよくよく向き合っていくと、どれもディテールがしっかりつくり込まれた繊細な表現であることにも気づく。
迷いなく勢いのある描線。眼球の色によって感情を描き分ける色彩感覚。牙を繰り返し描くことで、ビジュアルだけではっきりとしたメッセージを観る側へ伝えていく手法などなど。どの作品もよく練られており、視線をたっぷり遊ばせてもらえる表現になっていて見応えあり。
のん本人は、こうも話す。
「ここにはわたしが『これはおもしろい!』と感じたものを、すべて詰め込んであります。やりたい、つくりたいという気持ちはだれにも止められないし、止めなくたってもちろんいいもののはずですよね。
観る人がすこしでも共感してくれたり、『あ、わたしも何かやりたい!』って気持ちになってもらえたら何よりうれしい」
全力でこちらにぶつかってくる作品群に触れれば、「女の子」にかぎらず誰しも、きっと感情のどこかを揺さぶられてしまいそうだ。