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 田﨑 「悪名は無名に勝る」と言いますからね。たしかに、今回の告発を受けても、今のところ永田町では小池さんを追及する声は上がっていません。前回の都知事選でも、学歴詐称疑惑が炎上したのに、小池さんは366万票も獲って当選している。次点との差は280万票。この結果を見ると、学歴詐称疑惑がメディアで盛り上がっても、都民の投票行動には影響しなかったことが分かります。自民党議員たちは疑惑を追及するどころか、「小池さんの票を分けてほしい」とすら思っている。

  前回の都知事選は、新型コロナ流行という緊急事態の最中でしたから、首長を代えるという選択肢は考えられず、やむなく小池さんを選んだ都民もいたと思います。

 ただ、小池さんの根強い人気は、彼女に批判的な私も認めざるを得ません。まだ都庁職員だった頃、「小池知事はとんでもない!」と妻にいくら言っても、「何言っているの? 小池さん、頑張っているじゃない」と聞く耳さえ持たない。おそらく、大多数の有権者も同じ感覚だと思いますね。

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 田﨑 うちの家内も同じ反応でしたよ(笑)。

 奥谷 男社会に1人切り込んで戦っている小池さんのイメージが、多くの女性たちの共感を呼ぶんです。有力な対抗馬もいないので、今回の告発だけで、彼女を引きずり下ろすことは難しいでしょうね。

会見で告発記事についてコメントする小池都知事 ©時事通信社

  先ほど奥谷さんは、小池さんが学歴詐称疑惑を「気にしていない」と指摘されましたが、さすがに今回は小池さんにプラスに働くことはないでしょう。むしろ絶対にマイナスです。定例会見で答える小池さんを見ると、内心ビクビクしながら怯えていると思います。それに小島さんは「都知事選や国政選挙で、小池さんが『カイロ大卒』を選挙公報に明示すれば、公職選挙法違反で刑事告発する」とまで言っているので、このまま騒動がフェードアウトするとも考えにくい。

小島敏郎氏による告発を掲載した「文藝春秋」5月号は2万部の重版

「敵か、味方か」の2分法

 奥谷 私が問題だと思うのは、小島さんにしろ、カイロ時代の同居人だった北原さんにしろ、親しくしていた人たちから、次々と暴露されて、裏切られていることです。それはひとえに小池さんの人間関係や人との付き合い方に何らかの問題があるということではないですか。

  小島さんは、まさに小池さんの「身内」でした。小池さんは環境大臣時代に「クールビズ」政策を打ち出しましたが、当時、環境省幹部だった小島さんからの提案です。都知事となった小池さんに、築地市場の豊洲への移転が問題となっていると教えたのも小島さんです。彼が小池さんの進むべき道を決めてきたと言っても過言ではない。

 2人は、明治神宮外苑再開発の樹木伐採計画をめぐって決別したと言われていますが、小池さんが裏切りに遭うのは、ある意味で自業自得だと思います。彼女は、常に人を「敵か、味方か」の2分法で考え、味方であっても腹を割って話をする関係を結ばない。自分にとって使える人間かどうか、という利害関係で見ているんですね。利害が一致しなくなれば、たちどころに切り捨ててしまう。