われわれのこの技術に関しては、独占ライセンスを付与して、ACCELStars(アクセルスターズ)社を起業しています。睡眠測定サービスを提供する会社という位置付けです。アクセルスターズ社のウェアラブルデバイス「ACCEL」は、感度97.2パーセント、特異度82.2パーセントと世界最高精度を達成しています。
睡眠医療を充実させるエコシステム
こうした睡眠健診も含め、私たちは広い視野で「睡眠医療のエコシステム」を構築しようとしています。
「睡眠医療」とは、睡眠時の障害となる疾患を改善する目的の医療で、これは以前から臨床で実施されてきています。睡眠関連の器具や製品なども、だいぶ昔から存在しています。
しかし、その睡眠医療は各分野間がうまくつながってはおらず、基礎研究から臨床応用までの総合的な連関を持ったものでもありませんでした。また、このような医学の各分野では、基礎研究と臨床の間には「予防」の分野があり、それは「一次予防」(健康増進)、「二次予防」(早期発見)、「三次予防」(重症化予防)と呼ばれるカテゴリーがあるのですが、睡眠医療にはこれまで予防の観点が手薄だったのです。
睡眠は脳の通常の活動ですから、つぶさに睡眠を見ていくと脳の異常事態を早め早めに察知することができます。年に一度の健康診断のような形式、あるいは健康診断のメニューの一つとして睡眠検査ができると、早期に不調をとらえて適切な対処をし、病気の発症や悪化を防ぐことができます。睡眠医療における予防には、そのような意味合いがあります。
この予防分野を立ち上げていくことで、睡眠にまつわる生活習慣や生活の環境の改善を含めて睡眠医療のエコシステムができていきます。
将来はこのエコシステムを活用することで、睡眠健診の概念を社会に浸透させ、睡眠関連の病気の予防と早期発見につなげていくことができるはずです。睡眠が主要因と考えられている病気の解明、これまで想定されていなかった病気への睡眠の影響などの解明にもつながっていくことも考えられます。
睡眠が関係する病気とその実態
睡眠と実際の病気との関連についても、説明をしておきます。
睡眠に異常が現れる病気には、実に多様なものがあると考えられます。ただ、睡眠との因果関係がはっきりしないもの、睡眠が関係していると言われているものの、影響の程度が不明なものもあります。
まずここでは、おおまかな4カテゴリーで、具体的な病名をあげてみます。