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「ドカ食い」「偏食」は命を削るだけ…上皇陛下の執刀医・天野篤が警鐘を鳴らす「キケンな食べ方」

『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』より #1

2024/05/15
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 なぜドカ食い、偏食は体に悪いのか……? 上皇陛下の執刀医にして、「神の手」の異名を持つ心臓血管外科医の天野篤さんの新刊『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』(講談社ビーシー/講談社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

なぜドカ食いをしてはいけないのか? 写真はイメージ ©getty

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肥満の人は過食により、血糖値が上昇しやすくなっている

 高血圧や糖尿病を予防することも、心臓を守り、健康寿命を延ばすためには重要になります。これらの生活習慣病のすべてに大きくかかわっているのが「肥満」です。

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 肥満の人は過食であることが多く、普段から中性脂肪やコレステロール、塩分、糖質を多く含む食品を過剰に摂取しているといえます。まずは、その点を自覚すべきです。

 そうしたベースに加え肥満になると、血糖値を下げるホルモンの一種「インスリン」の効きが悪くなって抵抗性を示します。すると、筋肉や脂肪細胞でブドウ糖が吸収されにくくなり、血糖値が上がりやすくなるのです。

 また、インスリン抵抗性があるとインスリンが過剰に分泌されるようになります。そうなった場合、肝臓が中性脂肪の合成を促進し、中性脂肪を多く含んだVLDL(ヴイエルディーエル=超低比重リポタンパク質)が血中に過剰に放出されて「脂質異常症(高LDLコレステロール血症)」を招きます。

肥満がもたらす様々な健康リスク

 インスリンの過剰分泌は、高血圧にもつながることがわかってきました。インスリンは腎臓でのナトリウムの再吸収を高進して血液中のナトリウム濃度を高めるので、それを薄めるために水分が血管に流れ込みます。その結果、血液量が増加することになり血圧が上昇するのです。インスリンの過剰分泌は交感神経系も刺激し、末梢血管を収縮させる働きがあるホルモンが放出されます。これも血圧を上げる要因になります。

 さらに、肥大した脂肪細胞からは「アンジオテンシノーゲン」という生理活性物質が分泌されます。この物質には血管を収縮させる働きがあるため、これも血圧を上昇させます。

 つまり肥満は、脂質異常症、高血圧、糖尿病のリスクを高めます。これらは重なれば重なるほど動脈硬化が進行し、心臓疾患が発症しやすくなってしまうのです。