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「ドカ食い」「偏食」は命を削るだけ…上皇陛下の執刀医・天野篤が警鐘を鳴らす「キケンな食べ方」

『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』より #1

2024/05/15
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 肥満を予防するためにもっとも注意すべきなのが食生活です。偏った食事を改めて、ご飯などの主食を食べすぎないようにしつつ、肉、魚、大豆製品、野菜、キノコ類といったおかずをバランスよく摂取するように心がけましょう。脂肪分が多い油物や塩分の多い食事を控えるなど、日頃から気をつけることが大切です。

 ただ、それはわかっていてもなかなか実践できない人がほとんどでしょう。「好きなものを食べる」という欲求はそれくらい大きいものなので、まずは、「食生活の改善が肥満を予防して健康寿命を延ばす」と強く意識することを心がけてみてください。もちろん、摂取したカロリーを適正に消費する運動が重要なのは言うまでもありません。

上皇陛下の執刀医としても知られる天野篤氏(写真:講談社)

 近年、ペットとして飼われている犬の寿命が大幅に延びています。かつては10年前後でしたが、2012年から2020年の8年間で5年ほど長くなりました。これは、効果的な薬を使った感染症対策、獣医療の進歩、飼い主との適切なコミュニケーション、適度な運動の増加など、いくつか要因がありますが、「食事の管理」が大きいと考えられます。

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 最近は、毎日与えるドッグフードの質が大きく改善されていて、年齢や全身状態に応じてビタミンなどのさまざまな栄養素が配合されています。犬の生活習慣病を予防するための食事管理が進み、寿命が延びたのです。

健康寿命にも食事は大きくかかわっている

 われわれ人間も同じです。日々の食事によって栄養状態が改善し、医療が大きく進歩し、生活習慣病をコントロールするために効果的な薬がたくさん開発されました。日本では、保険制度によって誰でも手厚く高水準の医療が受けられます。

 日本人の平均寿命が、男性81.05歳、女性87.09歳まで延びたのも、そうした環境が整ってきたおかげといえます。ただし、それらの平均寿命と、寝たきりや要介護状態ではない健康寿命には大きな差があります。健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳ですから、健康上の問題で日常生活に制限のある期間が9〜12年もあるのです。

 その差に大きくかかわっている一因が食事だと考えられます。体によいものをバランスよく食べる。逆に健康に悪い油や塩分を控えるといった日々の心がけが、高齢になったときに差となって表れるのです。

60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常

60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常

天野 篤

講談社ビーシー

2024年4月18日 発売

「ドカ食い」「偏食」は命を削るだけ…上皇陛下の執刀医・天野篤が警鐘を鳴らす「キケンな食べ方」

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