ウォーレン・バフェット氏が大量保有を進めているとわかった商社株。“バフェット後”に株価は2〜5倍に急騰した。一方、商社幹部は株主還元の激化に嘆き節を漏らしているという。月刊文藝春秋の名物連載「丸の内コンフィデンシャル」より抜粋して紹介します。

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株価上昇で嘆く丸紅

 ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイは商社株を大量保有する。三井物産(堀健一社長)、三菱商事(中西勝也社長)、伊藤忠商事(岡藤正広会長CEO)、丸紅(柿木真澄社長)、住友商事(上野真吾社長CEO)と、大手5社の保有比率はそれぞれ約9%に達した。

 投資の神様の取得で商社株は上昇。「バフェット後」の株価は「前」に比べ、2〜5倍に急騰したが、ここにきて丸紅幹部から「他社に追随するのがキツイ」と、嘆き節が聞こえてきた。

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“投資の神様”として知られるウォーレン・バフェット氏は商社株を大量保有 ©時事通信社

 大量取得に応えるかのように、5社は株主還元で競っているからだ。配当と自社株買いを合わせた総還元額は2024年3月期に1兆9000億円に上った。特に大盤振る舞いしたのが三菱商事で、2月に5000億円を上限とする自社株買いを公表。24年3月期の総還元性向は92%に達した。

 還元は今期以降も続く。伊藤忠は25年3月期の年間配当を前期に比べて40円多い1株200円とし、1500億円の自社株買いも決めた。三井物産は26年3月期まで、3年累計の基礎営業キャッシュフローに対する総還元性向の目標を37%程度としていたが、40%に引き上げた。

 丸紅は今期、年間配当を前期比で5円多い1株90円にし、発行済み株式の2.3%に相当する3800万株を上限に、自社株買いを実施すると発表。それなりに株主に報いた形だが、「三井、三菱、伊藤忠の上位3社に対抗しようと背伸びをしている」と、証券アナリストは分析する。

 事実、ある丸紅幹部はこう社内事情を明かす。

「4400億円に上るフリーキャッシュがあるが、投資に向けるか、還元に充てるかで、社内は揉めている。アクティビストのヘッジファンド、エリオット・マネジメントに狙われている住商よりはマシだと自虐的に言っているが……」

 丸紅の柿木社長は今期が在任6年目で、来年4月に交代する可能性が高い。これまで約30年に亘り、同社社長は不良債権処理に頭を悩ませてきた。

「8年連続で赤字を出した末に売却したインドネシア石油化学合弁事業、20年に過去最大の赤字を計上する原因となった米穀物事業。巨額の損失処理をした人もいれば、後任にツケを回した人もいる。次期社長は不良債権処理ではなく、投資をするか、バフェット氏に報いるのかで、悩むことになるだろう」(同前)

 次期社長は、新たな難題を抱えることになる。