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社長の赤字を庇う会長

 経団連会長の十倉雅和氏が会長を務める住友化学(岩田圭一社長)が危機的状況にある。2024年3月期の連結最終損益が、3118億円の赤字となったのだ。創業以来最悪の数字であり、岩田社長は経営戦略説明会で「危機レベルの数値」と焦りを見せた。

十倉雅和氏 ©文藝春秋

 同社は住友グループの白水会の御三家。経団連会長も米倉弘昌氏と十倉氏の2人を輩出した名門企業だ。自民党の政治資金団体「国民政治協会」への献金額は、トヨタ自動車(佐藤恒治CEO)と並び、トップの5000万円に上る。

 業績悪化の原因の一つは上場している製薬子会社・住友ファーマ(野村博社長)の業績不振だ。主力の統合失調症薬の特許が切れ、子宮内膜症治療薬など基幹商品の販売も低迷。3月期の純損益は3150億円の赤字となった。野村社長は引責辞任し、木村徹専務が社長に昇格する。

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 もう一つがサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコとの合弁会社ペトロ・ラービグの業績低迷。

「05年に米倉氏が社長時代に約2兆円を投じてペトロ・ラービグを設立。十倉氏が社長時代の12年に、同社が持つ石油化学コンビナート拡張を決めた。この判断は『致命的なミス』と言われる」(同社OB)

 会見で住友化学は、収益力の強化に向け、サウジアラムコと共同チームをつくることで合意したと発表した。だが巨大プラントを立て直すには時間がかかる。

 社長の岩田氏は東大法学部卒。エネルギー、有機EL事業、情報電子化学などの業務を担当し、19年に社長に就任した。

「頭も良く、優秀だが、経営企画畑で、実際の事業をあまり経験していないのが弱点。十倉会長も似た経歴で、営業現場の声があまり届かない」(同社関係者)

 十倉氏は、岩田氏を信頼しきっているという。

「十倉氏が社長時代に岩田氏は経営企画担当の常務に引き上げられた。社長就任も十倉氏からバトンタッチされた形。それゆえ十倉氏は周囲が『岩田はダメだ』と咎めても庇う。赤字についても『悪いタイミングで(社長を)渡したから』とフォローしていた。過去最大の赤字を出しておいて、この認識では、呆れざるを得ない」(財界関係者)

 危機感が希薄な会長の下で、住友化学は経営の立て直しを迫られている。

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(丸の内コンフィデンシャル「株価上昇で嘆く丸紅、社長の赤字を庇う会長、NTT人事の裏、暗雲垂れ込めるIR」)。