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「部屋は血の海になっていた」首相側近・木原誠二氏、妻の元夫が自宅で“謎の不審死”…“捜査一課・伝説の取調官”が明かす《木原事件》の全容

『ホンボシ 木原事件と俺の捜査秘録』より #1

2024/06/25

source : 週刊文春出版部

genre : ニュース, 社会, 読書

note

「この日、家宅捜索が行われたのは、06年4月10日未明に覚知した不審死事件に関するものだ。本件は長らく未解決の扱いだったが、発生から12年が経過した18年春に、未解決事件を担当する捜査一課特命捜査対策室特命捜査第一係が中心となって再捜査に着手していた」(捜査関係者)〉……。

 そう始まる記事を、俺は眼を皿のようにして読んだ。なぜなら、自分自身がその再捜査で重要参考人の取調べを行い、捜査にも深くかかわっていたからだった。

「部屋は血の海になっていた」安田種雄さん不審死事件の全容

 不審死事件の内容は次のようなものだ。

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 ——2006年4月10日、都内の閑静な住宅街で、ある「事件」が起こった。その日、不審死を遂げたのは風俗店に勤務する安田種雄さん。警察に通報したのは、貸していたハイエースを深夜に返してもらおうと、その家を訪れた種雄さんの父親だった。

安田種雄さんの父

 父親が種雄さんの家に着いたとき、玄関のドアは開いたままになっていた。電気の消えた2階の居間には種雄さんが横たわっており、寝ていると思った父親は「おい、この野郎。こんなところで寝たら風邪ひくぞ」と体を揺すって起こそうとした。ところが、足の裏に冷たいものが伝ったのを感じ、照明のスイッチを点けると、部屋は血の海になっていた。そして、眼下には、タンクトップを血に染めた種雄さんの遺体があった。

 通報時刻は10日の午前3時59分。すぐに管轄である大塚署員が駆けつけた。その際、種雄さんの妻であるX子は子供2人と2階の奥の寝室で寝ていたといい、「私が寝ている間に、隣の部屋で夫が死んでいました」と供述した。

 警察の当初の見立ては覚醒剤乱用による自殺ではないかというもので、その理由は、2階のテーブルと作業台の上に覚醒剤が入ったビニール袋が発見されたからだった——。

故・安田種雄さん (遺族提供)

 俺は「週刊文春」の記事を読みながら、「異様な終わり方」をしたこの事件をめぐる再捜査の様々な場面が脳裏に浮かんでくるのを感じた。

 捜査はX子の聴取が行われていた2018年10月、国会が始まるタイミングで消え入るように終わった。俺は国会が閉会すれば再び捜査が開始されると思っていたが、結局、捜査が本格的に再開されることはなかった。

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