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「国からの運営費交付金や授業料収入など、限られた財源を活用して、教育研究環境の充実に加え、設備老朽化、物価上昇や光熱費等の諸費用の高騰、人件費の増大などに対応せねばなりません。

 学生の学習環境を維持・改善する費用を安定的に確保するため、過去3年にわたりさまざまな施策に取り組んできました。そうしたなかで国立大学法人化以降20年間据え置いてきた授業料についても、その改定を検討しています。

 ただし、もし値上げをする場合には、経済的困難を抱える学生への配慮は不可欠で、授業料免除の拡充や奨学金の充実などの支援策も併せて実施しなければならないと考えており、その具体的な仕組みも検討しています」

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 藤井総長は6月21日に「総長対話」をオンラインで実施して、学生と対話すると発表している。これに対して教養学部学生自治会は、大講堂を会場にして対面で実施すること、討議の場とすること、学生からの質問の機会を設けること、学生からの理解が得られるまで複数回行うことなどを求めた。

©時事通信社

 この要望に対して大学は、本名を開示することを条件に自由発言の場を設けることを、参加申し込みをした学生に対して6月14日に通知した。しかし、冒頭の女子学生は大学の対応を「不適切」だと指摘する。

「東大が格差を助長するなら何を希望に学べばいいのか」

「本名を開示しなければならないので、個人の経済的事情など切実なことは話しづらくなります。また、発言者の所属や学年が偏らないようにするためと説明していますが、値上げの影響は所属や学年、出身地やジェンダーによって偏るため、大学の対応は不適切です。拙速に値上げをするためのパフォーマンスではないでしょうか」

 インターネット上では学費値上げに反対する緊急フリーペーパーが公開されていて、多くの学生の声が掲載されている。

「差別や格差のない社会を実現するために東大で学びたいと思ったのに、その東大が格差を助長するなら、一体何のために、何を希望にして学んでいけばいいのでしょうか」(法学部・4年)

「東大はなぜそこまでして低所得の学生を排除したいのでしょうか。東大がブルジョワのための大学に成り下がったら、私は東京大学の学生であることが恥ずかしくて仕方ありません」(文学部・4年)

 国立大学では2019年度に東京工業大学と東京芸術大学、2020年度に一橋大学と千葉大学が標準額から約2割の値上げを実施した。東京大学の授業料値上げの方針が報じられたことで、追随する姿勢を見せている国立大学もあり、東京大学が値上げをすれば全国に波及しそうだ。学生からの疑問や怒りの声に対し、藤井総長は「総長対話」で何を語るのだろうか。