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 東京五輪の開催についても、国内スポンサーからの収入は3761億円にのぼり、そのうちIOC・JOC・電通の取り分は総額1077億円でした。それらは適正な金額だったのか、どこにいくら入ったのか。東京都は五輪組織委員会に監事を送り込んでいましたが、言を左右にして説明していません。

 異論を許さない強権的な体制は、都民ファも同じ。22年度、都立高校の入試で英語のスピーキングテストが導入された時がそうでした。ベネッセコーポレーションが運営に携わり、採点はフィリピンの子会社が請け負うなど、採点の不透明さが問題視され、さらに、受験生によって不平等なシステムであることも指摘されて、3人の都民ファの議員が反対しました。すると、都民ファはこの3人を除名処分にしたのです。テストはトラブルが多発して、わずか2年でベネッセは撤退を決めました。

 実際の都議会を見ている都民の方は少ないと思いますが、ぜひ見て頂きたい。国会と違い、野党の質問には答えない小池さんの態度はもちろん、都民ファ議員も、ヤジを飛ばすだけ。さらにヤジに抗議した都議らには、訴訟まで仕掛けたりもする。答弁に立つ都庁幹部も、小池流の紋切り型の答弁を繰り返している。議会は熟議、討議の場ではなくなっています。

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小池百合子都知事 ©文藝春秋

「予算の単位が違うのよね、桁が」

 小池さんは一時、国政への復帰が噂され、さらには次の総理候補としても取り沙汰されていました。意を決して、私が手記を発表しようと思い立ったのは、このままでは、日本の政治が危うくなると感じたからです。民主主義を守りたい、そのために力を尽くしたい、と。

 私は学生時代、司法試験と国家公務員試験に合格し、環境庁に入りました。水俣病に代表される公害病が問題となる中、環境行政に身を投じたいと思ったからです。

 様々な政治家に仕えましたが、特に思い出深いのは、竹下登さんです。昔の自民党党人派には「政治は弱者のためにある」との信念がありました。母子家庭で育ち、幼少期に苦労も味わった私は、この主張に共鳴しました。竹下さんには金権政治的な一面もあったかもしれませんが、「弱者を救いたい」との強い思いがあった。県議出身で、地方創生政策を行うなど、晩年まで地方を大切にする心を持ち続けていました。

 翻って、小池さんはどうでしょう。緑をイメージカラーにしていますが環境問題に興味はなく、弱者を思いやる「心」がなく、強者が好き。やはり、リーダーには「弱者に寄り添う心」が必要です。

 彼女は今、ものすごい勢いで都の金をばらまいています。選挙対策であり、単に自分がスポットライトを浴びたいからでもあります。23年1月4日の都庁職員を前にした年始の挨拶では突然、「子ども手当をひとり一律5000円支給する」と宣言しました。その日の午後に岸田文雄総理が行うスピーチで「異次元の少子化対策」について語るとの情報を掴んだからです。「総理よりも目立ちたい」という欲望から、何の熟慮もなく、思いつきで言ったのです。

 東京は国より財源が、ずっと豊かです。小池さんはそのことに都知事になって気づき、ある時、私に嬉しそうに言いました。

「予算の単位が違うのよね、桁が」