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『やらかしてしまった若者を拉致。縛って樹海に連れてきて絞殺。自殺に見せかけるため、樹に無理やり縛りつけ、そのまま放置して帰った』

 こう仮説したら、死体の不自然な点は一つもなくなる。

写真はイメージ ©getty

「これ……って殺されてる? しかも結構雑に殺している感じ?」

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 僕はファミレスで独り言を言った。

 Kさんは1人で樹海を散策していて、旧遊歩道沿いで遺体を見つけた。だがその遺体がどう見ても殺されていたので、

「ひょっとしたら殺害した人がすぐ近くにいるかもしれない」と思い現場を離れたのだ。

 後ほどKさんから再びLINEが来る。

「落ち着いて写真を見てみたら、死にたてというわけではなかったようです。過去に出会った死体と比較してみると、おそらく死後1か月くらい経っていると思います。夏場だったら2か月で骨になってしまうところですが、冬場だと遺体はあまり変化しません。地面から足が浮いていたのも昆虫に食べられなかった一因かもしれません」と淡々と解説してくれた。

深まる謎

 数週間後、Kさんと樹海に入った。

 その遺体があった場所は、富岳風穴と精進湖の中間点だった。観光ルートではないし、自殺する場所としてもあまり選ばれないエリア。つまり今回の死体は、樹海の中ではマイナーなルートで発見されたのだ。

 ほっておいたら見つからない場所ではあるが、ただ今回の死体は道のすぐ近くにあった。

「旧登山道か旧生活道路ですね。目立つ道路じゃないけど、辿って歩く人がいたら嫌でも見つけてしまいますね。僕が見つけた直後にどかっと雪が降って、遊歩道に入りづらい状態になっていました。それにもし警察が見つけていたら、さすがに他殺として処理されていると思うんですよね。そうしたら多分、報道されるはず。まだ報道されていないということは見つかっていない可能性が高いです」

 Kさんと僕は、まだ少し雪が残る道を歩いて死体があった場所に進んだ。

「この先です、あ……残念、なくなってますね。あそこにあったんですけどね……」

 Kさんは指をさす。死体があったという場所は本当に旧道からすぐの場所にあった。少し高台にある。もし歩いてきたら、絶対に目に入るだろう

 おそらく誰かが見つけて通報したのだろう。

 Kさんはとても残念そうな顔をしている。

「まあ分かりやすい場所でしたからね。そのうち誰かに見つかるとは思ってました。生きた状態で連れてきたのか、死んだ状態で連れてきたのかは分からないですけど、どのみち樹海の奥の方までは連れていけなかったんでしょうね」

 樹海は1人でも歩くのが大変な場所だ。

 嫌がる人を連れて歩くのも、死体を背負って歩くのもしんどい。だから道沿いに歩いてきて、森に入ったすぐの場所で吊るした……。

 だから雪がなくなって、死体は発見され、警察に通報された。

 ただ、そうなると一つ疑問が残る。

 警察があの死体を見つけたとして、なぜ事件化していないのだろうか?

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。