富士の樹海で、真冬なのに上半身は裸で見つかった、若い男性の死体。その写真を見て、他殺だと感じたのはライターの村田らむ氏。さらに科学捜査研究所に勤めていた男性にも、この死体について聞いてみると「意外な回答」が……。新刊『樹海怪談 潜入ライターが体験した青木ヶ原樹海の恐ろしい話』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
◆◆◆
本当に他殺なのか? 専門家の回答は…
「たぶん警察は“自殺”として処理したんでしょうね。殺人となったら報道せざるをえないですし、かつ自分たちで捜査しなければならなくなる。県内の殺人の件数が増えて、青木ヶ原樹海の評判も落ちますし。今後さらに自殺スポットとして注目されてしまうかもしれない。メリットは一つもないんですね。だったら、自殺として穏便に処理しておこうってことでしょうね。一応は首吊りの形になってるわけだし……」
Kさんから写真が送られてきた時、「なんて杜撰な処理だろう。これでは逮捕してくださいと言わんばかりだ」と思ったが、結局それで犯人は逃げ切ってしまった可能性が高いのだろう。犯人は現在も日本のどこかで、普通に暮らしている。
そうやって葬り去られた殺人事件は、世の中には山ほどあるはずだ。
そう思うと背筋が寒くなった。
後日談だがこの数か月後、神戸での飲み会で科学捜査研究所に勤めていたという男性と会った。ドラマ『科捜研の女』の科学捜査研究所である。
それで、樹海の死体の話になって、色々見てもらった。
「この人、殺されてるっぽいんですけど、どう思います?」と言って、今回の写真を見せた。
「殺されてると思っても、実は自殺だってケースは多いですよ」と彼は言う。今回のケースも、木の上に乗って自分で首を樹と結びつけた後に、下に落ちれば可能だと言う。だが、写真を見て顔色が変わった。
「これは他殺かもしれないですね」
彼は意外な場所を指し示した。
首を吊っている男性のズボンの股間のあたりだ。まさに男性器の上。
「ジーンズの真ん中のラインが男性器がある位置からズレているんです。これって自分でズボンをはいたらこうはならないんですよ」
たしかにズボンをはいて、真ん中の線がズレることはない。たとえズレていても、数歩歩けば真ん中にくるだろう。
「つまり、これは死後誰かが無理やりはかせてる可能性が高いですね」
専門家は見るところが違った……けれど、やっぱり殺害されている確率が高いのは間違いなかったのである。
その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。