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 同著の著者紹介欄にははっきりと、1972年10月カイロ大学に入学し、1976年10月に首席で卒業した、「日本人として2人目、(日本)女性では初」の快挙だと書かれている。だが、1年目を落第したのならば、卒業はどう考えても1977年以降でなければ、おかしいのではないか。

 こうした綻びは、ひとつやふたつではなかった。私は資料を読み込むほどに混乱した。誤植や単純な手違いだとは思えない。悩みながら記事を期日までに書き上げたが、私はノンフィクション作家としての義務を果たし得たのだろうかと自問せずにいられず、彼女への疑念が自分の中に湧くことを押さえられなかった。

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「もっと早く止めてあげれば」

 初めて小池をテーマとしてから約4年、(小池とカイロで同居していた)早川さんから手紙をもらって2年以上が経過する中で、私は先日、『女帝 小池百合子』(小社刊)を出版した。幸い多くの読者を得ている。

「学歴詐称を告発した暴露本」「選挙直前に出版してあざとい」との声も聞くが、学歴に関する部分はすでに2年前本誌でかなり詳しく発表している。それを無視したのは大手メディアであり、私はここにこそ問題の根源があると感じた。

 小池百合子とは何者なのか。どのように生まれ、どのようにして今に至ったのか。彼女が生み出された時代や社会構造、メディアの罪、この国における「女性」を私は描いた。

石井氏の著書『女帝 小池百合子』(文春文庫)

 彼女の「自分語り」を検証する中で私は幼少期にも踏み込んでいるが、彼女の人格形成を知る上では重要なことで、そこに切り込まなくては彼女の背負ってきた苦悩も哀しみも描けないと考えてのことだ。

 この本から何を思うかは読者に委ねたい。著者よりも拙著を深く理解してくれる読者がいると、私はいつも信じている。

 拙著にも書いたが、早川さんが語った言葉で強く印象に残っていることがある。早川さんは姉のような立場にあった自分が、小池にもっと注意するべきだったと後悔していた。と同時に、なぜ日本のメディアは小池の嘘に気づけなかったのか、不思議でならないと繰り返し語った。

「カイロ大学首席卒業、そんな荒唐無稽な嘘が通じてしまう、日本のメディアとは何なのでしょうか。メディアが小池さんを暴走させた。少しも嘘がばれないから、マスコミが喜ぶような話を次々と作っていってしまったんでしょう。もっと早くに止めてあげていれば、ここまでにならなかったのに」

本稿にて仮名で証言している早川さんは、その後、実名である北原百代名義で手記「カイロで共に暮らした友への手紙」(文藝春秋2024年5月号)を寄稿。カイロでの日々をさらに詳細に語っている ©文藝春秋

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(小池百合子に屈した新聞とテレビ)。

 

本稿にて仮名で証言している早川さんは、その後、実名である北原百代名義で手記「カイロで共に暮らした友への手紙」(文藝春秋2024年5月号)を寄稿。カイロでの日々をさらに詳細に語っている。「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。https://bunshun.jp/bungeishunju/articles/h7888