決算が黒字なのに早期希望退職を募集する「黒字リストラ」。近年は多くの有名企業が大規模な黒字リストラを実施しており、今年の募集人数は過去最高を大きく更新する見込みだ。経営コンサルタントの日沖健氏の分析の後編では「リストラが会社に招く悪影響」について解説していく。(全2回の2回目/前編を読む)

何度もリストラを実施する会社が招いた「悪影響」とは…? 写真はイメージ ©getty

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「黒字リストラ」が社員に与える影響は…

 黒字リストラの実施方法は、各社まちまちです。日本企業で多いのは、「45歳以上の社員」や「営業部門に所属する社員」などと対象を絞って早期希望退職を募集し、応募者には割増退職金を支給して退職してもらう、というやり方です。

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 こうした黒字リストラは、社員にどういう影響を与えるのでしょうか。まず、近年リストラを実施した会社の人事部門関係者に取材しました。結論から言えば、「社員には大きな影響はない」という見解が大勢でした。

「昔は当社でも、辞めさせたい社員を個別に会議室に呼んで、首を縦に振るまで説得するといった手荒なことをしていました。しかし、近年はコンプライアンスがうるさいので、そういうリスキーなことはしていません。応募があったら『はいどうぞ』と受付けるだけで、社員との間でトラブルになるとかは、ありません」(金融サービス)

「早期希望退職を募集したら、もともと転職志望があるとか、実家が資産家といった社員が応募します。なので、周りの社員は『あの人がやっぱり応募したのね』という受け止め方でしょう。当社は45歳以上の社員が対象で、もともと戦力として期待していないので、職場でも大きな影響はないはずです」(エネルギー)

 早期希望退職の募集では、「会社から見て辞めて欲しくない優秀な人が応募し、本当は辞めて欲しいダメ社員は応募しない」という問題がよく指摘されます。実際は、どうなのでしょうか。

「以前は、たしかにそういう傾向がありました。しかし、近年は優秀で上昇志向の強い社員は、早期希望退職とかに関係なくさっさと外コン(外資系コンサルティングファーム)とかに転職しています。早期希望退職によって職場が戦力ダウンになったなどは、耳にしません」(素材)