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 では、当の社員は、早期希望退職をどう受け止めているのでしょうか。実際に早期希望退職に応募し退職した人は、思い切って応募したことに満足しているようです。

「30年近く勤めた会社を辞めるかどうか、さすがに悩みました。ただ、50歳を過ぎてからだんだんと職場で居づらくなってきていましたし、意外とスムーズに転職できたので、結果的には退職し満足しています」(生活品メーカーを退職・50代)

「昨年就任した新社長は、経営方針が不明確で、戦略は外しっぱなし。業界では一人負けで、この会社にそろそろ見切りを付けようと考えていました。昨年から転職活動を始めて、再就職のめどが立っていたので、今回の早期希望退職は渡りに船というところです」(計測器メーカーを退職・40代)

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 かつては、リストラというと、「首切り」「社員が路頭にまよう」といったネガティブなイメージがありました。しかし、近年は、転職市場が発達し、容易に再就職先を見つけられるようになったせいもあって、早期希望退職は社員にとってさほど大ごとではなくなっているようです。

「リストラを繰り返した会社」の末路

 一方、早期希望退職に応募せず会社に残った社員はどうでしょうか。「そんなに大きな影響はありません」(食品)という見解が多く聞かれましたが、一部に悪影響を訴える意見がありました。

「近年、事業部門の業績が悪く、もともと人員を減らしていたところに早期希望退職がありました。私の職場では、全部で10人いたのが早期希望退職で2名減って、1年経っても補充がありません。1人当たりの業務負荷が増え、メンバーは疲弊していますが、部門長は見て見ぬふりです」(サービス)

 今回の取材で最も印象に残ったのは、60代前半の電機メーカーの社員の過去の述懐と感想です。その電機メーカーは、1990年代から早期希望退職・事業売却といったリストラ策を繰り返し実施しています。

「最初の頃は、職場の管理職が高齢の部下に執拗に退職届を出すように迫り、組合がそれに反発し、騒然としました。社員も『誰が応募するのか?』と疑心暗鬼でした。しかし、回を重ねるたびに、『ああ、またか』という感じになり、今では組合は会社に抗議しませんし、社員も話題にすらしません」

写真はイメージ ©getty

「私自身は、リストラそのものには賛成でも反対でもありません。ただ、リストラを何度も繰り返し、リストラが当たり前というのは、ちょっと異常ではないでしょうか。淡々と静かに滅んでいく会社に、誰も希望を持てません。こんな会社にしてしまって、将来ある若手には本当に気の毒です」

 会社が生き残るために、リストラは必要なこと。ただ、それが当たり前になり、残った若手が失望して働く意欲を失うとすれば、社員にとっても会社にとっても不幸です。リストラが当たり前という現状を労使・政府が問題視し、しっかり対応を考えていくことを期待しましょう。