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「これが誹謗中傷だ」という明確なラインとは?

――マンガでは、人妻への誹謗中傷の言葉として《ブス》《ヤリマン》《肉便器》などが出てきます。

Ⓒ左藤真通・富士屋カツヒト・清水陽平/白泉社

 これはあからさまな侮辱表現に思えますが、実際の誹謗中傷トラブルでは、もっと婉曲的な表現も問題になるようです。

「こんな言葉は侮辱」「これを超えたらアウト」などのボーダーラインはありますか。

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清水 実は、「これが誹謗中傷だ」という明確なラインは、ありません。

オンライン取材での清水陽平氏 Ⓒ文藝春秋

――え、そうなんですか?

清水 まずお話ししたいのが、《誹謗中傷》とは法律用語ではない、ということ。一般の方々にとって、誹謗中傷は「自分にとって不快な言葉すべて」という認識だと思うんですね。

 しかし、私たち法律家は「不快な言葉を受けたことが、法律上の何にあたるのか」を見ます。具体的には、名誉毀損、名誉感情侵害、プライバシー権侵害などです。

言葉の「背後」にあるものを見る

――名誉毀損と名誉感情侵害は、どう違うのですか。

清水 名誉毀損は「他人が自分に与える評価」で、社会的評価の低下を招くものとされています。

 一方、名誉感情侵害は「自分が自分に与える評価」。わかりやすく言うと、不快感や嫌悪感など、自分の感情ですね。

Ⓒ左藤真通・富士屋カツヒト・清水陽平/白泉社

――では、実際の相談では「どんなひどい言葉を書かれたか」を詳細に聞きだす?

清水 お話はもちろんちゃんと伺いますが、私たちは誹謗中傷の言葉だけで判断しているわけではないんです。

――というと?

清水 誹謗中傷の書き込みに至るまでの経緯、どういう文脈で書かれたのか、書き込みの頻度はどれくらいか、などを見ていきます。

 なぜかというと、たとえば「《結婚詐欺師》と言われて不快だ」と主張する人がいるとします。ところが、その人物が実際に詐欺的な行為をしていたら、「そう言われても仕方がないのでは」となりますよね。

Ⓒ文藝春秋

――そうですね。「おまえが言うな」ですね。

清水 ですから、誹謗中傷をされたとしても、そこに至るまでの背景を冷静に見る必要があるんです。