白泉社『黒蜜』で連載中のマンガ『しょせん他人事(ひとごと)ですから~とある弁護士の本音の仕事~』がドラマ化され、7月19日からテレビ東京系で放送がスタートする(毎週金曜20:00~)。

 主人公の弁護士・保田理は中島健人、保田の事務所に勤めるパラリーガルは白石聖、ドラマオリジナルキャラクターの喫茶店主・柏原麻帆を片平なぎさが演じる。〈炎上〉〈誹謗中傷〉〈情報開示請求〉などネットトラブルに特化したドラマとして「テーマが身近すぎる」「実際に起こりそう」と早くも話題だ。

『しょせん他人事ですから』をより楽しむために、主人公のモデルでありマンガ監修を担当する弁護士・清水陽平氏のインタビュー記事を再公開する(初出2022年8月29日、単行本巻数、発行部数は最新のものに変更。肩書き、年齢等は当時のまま)。

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 ネット上の誹謗中傷・炎上がテーマのマンガ『しょせん他人事(ひとごと)ですから』(白泉社)が売れている。SNS時代を映す“情報開示請求”ドラマとして話題となり、2021年7月に電子版で発売以降、累計210万部の売上を記録。今年7月には紙コミックスの第7巻も発売された。

 主人公はネット案件に強い弁護士・保田。誹謗中傷を受けた人妻ブロガーは、保田への相談をきっかけに書き込んだ相手を特定するが、それはまさかの人物で──。保田のモデルであり、作品監修を担当する弁護士・清水陽平氏に話を聞いた。(全3回の1回目/2回目を読む)

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『しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~』Ⓒ左藤真通・富士屋カツヒト・清水陽平/白泉社
清水陽平弁護士

タイトル「しょせん他人事」は弁護士のホンネ? 

――マンガの第1話では、炎上した人妻ブロガーが弁護士の無料相談に訪れます。泣く人妻に対して、主人公・保田の態度が超ドライなのが印象的です。

 清水さんは15年間ほど前からネットの誹謗中傷・炎上事案に関わっていて、保田のモデルだそうですね。タイトルの『しょせん他人事ですから』は、清水さんの実際の言葉ですか?

Ⓒ左藤真通・富士屋カツヒト・清水陽平/白泉社
Ⓒ左藤真通・富士屋カツヒト・清水陽平/白泉社

清水 そうですね。連載を立ち上げる前に、原作の左藤さんと編集の方が取材にいらして。その際に、弁護士は「しょせん他人事」という感覚で仕事をしないといけないですよ、という話をしたんです。

――保田が笑顔でその台詞を言うのが、他の熱血弁護士マンガとは違うなと思いました。

Ⓒ左藤真通・富士屋カツヒト・清水陽平/白泉社

清水 私はおそらく「~じゃん?」とは言ってないですが(笑)、第1話の人妻と保田の相談のやりとりは、初回の取材で私が話したことが、ほぼそのまま描いてありますね。

 第1巻以降の連載では「弁護士の自殺率が高い」という話題が出てきますが、これも初回の取材でお話ししました。弁護士は、依頼を“自分ごと”として受けてしまうと、潰れやすいんです。

「依頼者とはあえて距離をとる」

――依頼を“自分ごと”にすると、心の負担が大きい?

清水 人によってはそうですね。持ち込まれる依頼に対して一定の距離がとれないと、弁護士業務は難しいと思います。

Ⓒ左藤真通・富士屋カツヒト・清水陽平/白泉社

――依頼者とは距離をおく。それをひと言でまとめたのが、『しょせん他人事ですから』というフレーズ?

清水 ええ。冷たく接するという意味ではないのですが……左藤さんと編集さんには新鮮だったようで。

――確かに、弁護士は「依頼者に親身になって寄り添う仕事」のイメージがありますね。

担当編集 ところが、清水さんは真逆のことを言ったので、僕たちには衝撃で。

 取材で弁護士の仕事について伺って、ひと通り理解したと思ったんですが、最後に「しょせん他人事」という話になって。「あれ? そもそも、自分が思っていた前提が勘違いなのか!?」と。

清水氏が代表を務める法律事務所の自己紹介ページ

――弁護士のイメージが崩れた? 

担当編集 そうですね。僕には「弁護士といえば人情肌だろう」という先入観がありました。

 もちろん、清水さんも実際の依頼者にはしっかり寄り添う部分もあると思います。でも、“弁護士としての自分を守る”とか“仕事を正確に行う”という意味で、他人事として受け止める心構えが大切というのは、すごく説得力があって。同席していた左藤さんも、目からウロコが落ちてました。

 それで、タイトルはすんなり『しょせん他人事ですから』に決まったんです。