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財務次官セクハラ疑惑を「政局」で終わらせるべきではない理由

人権感覚のある与野党議員による協力が欠かせない

2018/04/25
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 財務省の事務次官のセクハラ疑惑が、すっかり政局絡みで扱われている。

 メディアでは、麻生財務相がいつ辞めるかという点に関心が集まり、辞任した場合に、安倍政権に及ぼす影響なども、盛んに語られる。

財務省を出る福田事務次官 ©共同通信社

安倍シンパは「安倍政権潰し!」と怒りを爆発

 こうした状況への反発か、自民党の下村博文・元文科相は講演会の中で、「テレビ局の大半は『安倍降ろし』」「日本のメディアは日本国家をつぶすために存在しているのかと、最近、つくづく思う」と不満をぶちまけた。

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 ネット上でも安倍シンパの人たちが「安倍政権潰し!」と怒りを爆発。被害にあった女性記者とされる名前や写真をネット上にさらしたり、「ハニトラ」(ハニートラップの意)などと誹謗中傷したり、惨憺たる二次被害が生まれている。

 一方の野党は、森友問題での財務省の公文書改ざんや加計問題における官邸関与疑惑、防衛省の日報問題などと合わせて、麻生財務相や安倍首相の責任を問う材料として、このセクハラ問題を位置づけている。野党6党で財務省の担当者を呼んでヒアリングを行うのはよいにしても、女性議員らが黒い服で「#MeToo」のプラカードを掲げて抗議するというパフォーマンスには、首を傾げた。

 世の中に知られていない問題を提起し、解決しなければならない重要な案件であるとの認識を共有させる時には、様々なパフォーマンスを含めた告知は重要だろう。だが、今回の出来事で、問題の存在は多くの人に知らしめられた。「#MeToo」は、セクハラの被害を告発する運動で、政治の役割は、それを受けて解決の(あるいは改善の)道筋を作ることではないのか。

野党議員による「#MeToo」パフォーマンス ©時事通信社

むしろ国会できちんと追及して欲しい

 しかも、麻生氏が辞任しなければ、野党は審議に応じない、という。公文書の改ざんなどについての責任を大臣に求めるのは分かるが、それとは質の異なるセクハラ疑惑までからめるのは疑問なしとしない。

 確かに、次官個人の素行の問題であるはずの本件を、「訴える」という次官のコメントを財務省のホームページに掲載するなど、組織を上げて『週刊新潮』と対決するような対応をし、組織の問題にしたのは財務省である。麻生財務相の任命責任に加え、次官のセクハラ癖を省内の職員が気づいていながら止められなかった疑いがあることや、事態が発覚して以降の麻生氏や矢野康治官房長らの二次被害を招くような無神経な対応など、麻生氏や財務省を批判する材料には事欠かない。

 様々な問題は、むしろ国会できちんと追及して欲しい、と思う。そのためにも、与党は加計問題で「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」と言い続ける柳瀬唯夫・元総理秘書官の証人喚問に応じるなど、国民の疑問に答える姿勢を示して、野党が早く審議に戻る環境を整え、国会の正常化に努めてもらいたい。