なぜなら、親に嫌だなどと言おうものなら、否定や拒絶され、見捨てられて孤立させると脅されてきたからです。だから自分の本音を言ったら、見捨てられ生きていけないという恐怖を無意識に感じてしまうわけです。
その恐怖を避けるために、支配者に服従しながら顔色をうかがう一方、関係のない相手には遠まわしの攻撃をすることで、ある意味本人の心はバランスを保っているともいえます。
嫌いといえない代わりに、嫌いというメッセージを行動で示すこと。
これが受動攻撃の本質ですが、ある意味出せない相手に対する怒りを関係のない相手にぶつけて解消する「怒りの置き換え」という心理でも説明できます。
本人にとってはこれまで抑圧してきた怒りや悲しみ、恨み、憎しみ、敵意などを関係のない相手に使うことで過去の葛藤(かっとう)を解消しています。そうすることで自分の心のバランスを取っています。
しかし、攻撃される相手からすれば何も関係のないわけですから、非常に迷惑です。
攻撃を受けても、冷静に淡々と話す
受動攻撃に引っかかって嫌な思いや不愉快な違和感を感じたときにまずやるべきことは、その相手とできるだけ距離を置くこと。そして、本書でお伝えするような知識を得て、相手を俯瞰して眺めることです。
そして大事なのは、相手の受動攻撃に気づいてもなるべく過剰反応しないことです。
感情的になって攻撃してくる相手に怒りをぶつけて争ってしまうのは、受動攻撃をする人の思うつぼ。
攻撃する人は、攻撃を受けた人が怒ったり、イライラしたりすることで快感を得ているので、冷静に淡々と話すことが大切になります。
心理セラピスト
心理分析・心理セラピー講師。大分県生まれ。児童養護施設で8年間過ごした体験から、さまざまな心理学や心理療法を学び、2005年に独立。延べ1万人以上の心の悩みを解決し、現在も福岡と東京を拠点として活動している。独自の心理療法「リトリープサイコセラピー」を考案。問題の利得にフォーカスしたセッションは、「悩みがリバウンドしなくなる」と評判。著書に『自分を縛る“禁止令”を解く方法 見えない「利得」に気づくと、すべての問題は解決する』(大和出版)などがある。