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イギリスでも雪崩のようなセクハラ報告が

 ただ、ハッキリ言っておく必要があるでしょう。職場でのセクハラは、全世界共通の現象です。私の母国・イギリスでワインスタインのケースの後に起きたのは、大きな組織の要職に就いている人間が、女性に対して不適切な、そしてときには犯罪的な態度を取っているという雪崩のような報告でした。

 いくつかのケースは、日本とも類似しています。昨年のある時期、イギリスの政界に激震が走りました。複数の国会議員に、議会職員や女性ジャーナリストへのセクハラ疑惑が浮上したのです。その後、人道支援の分野でも同じようなレポートが出されました。国際NGO「オックスファム」は、「過去12ヶ月間に性的虐待の疑いがあった」としてスタッフ22人を解雇したことを認めました。

 福田氏の辞任は、必然的に日本におけるジャーナリズムのあり方、そして大半を男性が占める高級官僚と新聞やテレビ局の女性記者の力関係に注目を集めさせることになりました。

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イギリス議会でも一大スキャンダルに発展した ©iStock.com

麻生財務相は無知をさらけ出した

 同じようにセクハラと戦っている人は少なくないようです。英字紙ジャパン・タイムズは、複数の日本人女性ジャーナリストから「取材の過程でセクハラを受けたことがある」とメールがあったことを明らかにしています。セクハラを受けた女性(そして男性)記者のうち、上司に報告した人はほとんどいなかったそうです。

 その理由は想像に難くありません。テレビ朝日による抗議文を受けて、「もう少し大きな字で書いてもらった方が、見やすいなと思った程度に見ました」と漏らした麻生太郎財務相のことを思い出してください。彼がセクハラの事実認定をめぐって「(告発者)本人が出てこなければどうしようもない」と述べたことは、戦うことを決意した日本の女性が直面するリスクについて、信じられないような無知をさらけ出したと言うしかありません。

 女性記者の所属していたテレビ朝日の当初の対応を見れば、セクハラに関する訴えが深刻に受け止められると確信できる日本人女性があまりに少ない理由がよくわかります。実際、彼女たちの多くは、セクハラ被害を訴え出ることによって自分たちのキャリアに傷がつくと恐れています。

 報道によると、テレビ朝日が当初、福田氏の問題行動についての報道を拒否したことで、被害女性は週刊誌に証拠を持ち込んだそうです。また、彼女の上司は、彼女の名前が公になることによって新たなハラスメントが発生することを憂慮していたといいます。テレビ朝日が福田氏の言動をきちんと報じたいと望んだ女性記者の意思を尊重しなかったことは誤りですが、一方では事件が公になることによる結果についてはあながち予想が間違っていたとはいえません。