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「被災者の役で7キロくらい痩せてしまいました」瀧内公美(34)の進む道を決めた“代表作との出会い”《思い出すだけで涙が出る壮絶な撮影》

瀧内公美インタビュー#2

14時間前

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, テレビ・ラジオ, 映画

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――そして2017年に代表作『彼女の人生は間違いじゃない』と出会います。

瀧内 『日本で一番悪い奴ら』の助監督だった方がテレビドラマを撮ったとき、私を呼んでくださったんです。そうしたらその現場の監督のひとりが、今度『彼女の人生は間違いじゃない』の助監督をするということで、オーディションに声をかけてくださって。

 でもオーディションというより、面談みたいな感じでした。私は廣木隆一監督に根掘り葉掘り聞かれて、どんどん暗い気持ちになり、泣きだしてしまった。終わって外に出た瞬間、やっと息が吸えると思うと嬉しくなって、スキップして帰りました(笑)。そのスキップする姿をマンションの屋上から見て、廣木さんは私にしようと思ったそうです。

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「しんどかったしか出てこない」思い出すだけで涙が…

――福島の仮設住宅から、渋谷のデリヘルにアルバイトに行く主人公を演じた瀧内さんの演技は、すべてを振り絞ったような素晴らしい演技でした。

瀧内 それが廣木組のあり方だと思うんですけど、カメラが回らない日もありますし、どんどん追い詰められていくんですね。撮影中に7キロくらい痩せてしまって、これではシーンが繋がらないよって。それくらい追い詰められた現場でした。

 いちばんしんどかったのは実際の仮設住宅でロケをして、お隣にも被災した方が住んでいるようななか、自分の取り繕った感じが拭えなかったことです。私たちは宿泊先から仮設住宅に行き、撮影をして、また宿泊先に帰る。それが自分には耐えられなかったです。

 仮設住宅のおばあちゃんが「嘘をつかずに生きてくださいね」と言ってくださったのが忘れられません。でも映画は作りものじゃないですか? 私たちが撮影をする一方で、仮設住宅には自死する方もいらっしゃいました。しんどかった……しんどかったしか出てこないです。思い出すだけで涙が出てきます。

――やっとつかんだ主演作で、なんとか結果を出したいという気持ちもありましたか?

瀧内 そんなことを考える余裕はなかったです。普通は映画の主役だと、なんとしてでもこの作品でがんばろうと思いますよね。やってやるぞみたいな。でもこの作品に入ったときに、そういうことではないなと思いました。当事者にはなれない、でも当事者のように見せないといけない。毎日、死にもの狂いでしたね。

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