ことし2月の開館以来、ずっと大盛況続き。東京の新名所のひとつとして早くも定着したと言っていい。
麻布台ヒルズ ガーデンプラザB B1にある、「森ビル デジタルアートミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」だ。約7000㎡の広大な空間に、アート集団・チームラボの手になる数十に及ぶ作品群が、ところ狭しと入り乱れる趣向となっている。
エンターテインメントとして大いに楽しめる一級品であるのは、その人気ぶりからも窺えるが、それだけじゃない。「ミュージアム」と名乗っているとおり、最先端のアートに触れられることも請け合いである。
会場内でどんなものが観られるのか、探索してみよう。
会場も作品も「ボーダレス」
この施設は「ミュージアム」を標榜するものの、通常のそれとは異なり風変わりな点が多々ある。
まずは観て回る順番が、とりたてて決まっていない。入口はひとつだが、会場内に入るといくつもの通路と部屋が分岐し点在し、どちらへ進んでもかまわぬつくりになっている。
各部屋で観られる作品も、固定されているわけではない。ふつうアート作品といえば、決まった場所で観客を待っていてくれるものだが、ここの作品群は同じところでじっとしてなどいない。人の動きやふるまいに反応しながら、あらゆる作品が刻々と姿や居場所を変えていく。
たとえば、壁と言わず床と言わず一面に花々が咲き誇っては散っていく《花と人、コントロールできないけれども共に生きる ― A Whole Year per Hour》や、絵巻物から抜け出てきたような人物や動物が行列をなして進む《Walk, Walk, Walk》といったミュージアムの基調を成す代表的な作品も、いつどこで遭遇できるのかはわからないのである。
さらには作品同士がときに混ざり合ったりするので、いっそう複雑性を増す。壁面に咲き誇る花々と戯れていると、どこからか蝶の大群がやってきたり、カラスが侵入してきて、場の雰囲気が一変することもしばしば。作品同士の境界線がなく、文字どおり「ボーダレス」なのである。
かように作品が動き回り姿を変えながら、会場全体に広がっているので、訪れた観客は我が身ごと作品内に飛び込んでいくかたちとなる。作品の一部になるというか、自分が作品と一体化してしまう感覚に陥るのだ。没入感が味わえるどころの話ではない。作品と自分の境界線まで、見失いそうだ。