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「多くの人から『代表に絶対入らないといけない』と言われ…」

《医者に「このまま続けたら体操ができなくなる」と言われた中で「多くの人から『代表に絶対入らないといけない』と言葉があって、プレッシャーになっている部分があった。そこがつらい」と涙ながらに訴えた。》

「涙ながらに訴えた」が壮絶だ。田中記者は「五輪辞退は賛否が分かれる重い決断となったが、自身の行動の結果でもある。足元を見つめ直し再起につなげてほしい」と結んだ。

 ここで指摘されていた選手のメンタル面。そういえば思い出した、前回の東京五輪の開催中にこんな記事があったことを。

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《人種差別、ジェンダー平等、メンタルヘルス――。東京オリンピックで、選手たちが社会的な問題を巡り声を上げ始めている。》(毎日新聞2021年7月31日)

 国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会は平和や人権、多様性などの理念を掲げているが、東京五輪では森喜朗前組織委会長の女性蔑視発言などの問題が相次いだ。そんな状況だった大会で選手たちが声を上げていることをまとめた記事だった。

21年に開催された東京五輪の開会式。同大会では、出場選手が自身のメンタルヘルスについて言及するシーンが増加した ©JMPA

 たとえば多くの選手が口にした「メンタルヘルス」。体操女子団体総合決勝で途中棄権した米国のシモーン・バイルス選手は、メンタルヘルスが理由だったと明かした。16年リオデジャネイロ五輪4冠のスター選手は、個人総合決勝も棄権。

 スケートボード男子ストリートのメダル候補だった、米国のナイジャ・ヒューストン選手は、競技で7位に終わり、SNSに「私も人間だ。重圧や期待と闘うのは簡単ではない。負けたらホテルで酒を一気飲みすることもある。メンタルヘルスは大事だ!」と投稿。

 女子マウンテンバイク(クロスカントリー)で14位だったリオ五輪の金メダリスト、ジェニー・リスベドス選手(スウェーデン)は「終わって良かった。五輪チャンピオンじゃなくてジェニーになりたい」と語った。リオ五輪後は重圧からうつや摂食障害になり、一時競技を離れたこともあった。

 これらのように選手には極度の重圧がかかる例がいくつも書かれていた。では、何か少しでも有効な対策はあるのだろうか?