笑顔にこだわり抜いた、世界でも稀な野球カード
「で、それこそ最初は打ってる投げてる、プレーの写真が多かったんです。そしたら買われたお客さんから『笑顔がほしい』ってご意見いただいたんです。それこそ叱咤激励ですよ、なぜこんな写真を選んだんだと。例えば大谷投手の写真だとして、投げるときはウンッて踏ん張りますよね。もしかしたら男性だったらそれがカッコいい写真かもしれないけど、女性は笑顔のほうがいいとご意見いただいたんです」
写真が一変する。なるべくアップのもの、なるべく笑顔。谷川さんは写真選びに全神経を注ぐ。ベーマガの平澤さんは「食品会社の担当さんにしとくのがもったいない。編集者にしたい」という。アップの写真は人柄が出るから、どんな選手か知らなくては選べない。谷川さんは帰りが遅くなっても、録画した試合を見終えてから寝るそうだ。驚いたのは札幌ドーム、東京ドーム、鎌スタに自腹でシーズンシートを購入してることだった。球団に言えば絶対、席を用意すると思うんだけど、そこはきっぱり一線を設けている。「あんまり行けてなくて、札幌は年に12回ぐらいです」と笑う。もう仕事の域を完全に超えている。
「どうしてもダブりは出てしまうんですけど、BBMでカードができた段階、それから物流に出す段階で2回シャッフルしてますから、偏りはないはずです。もちろん応援大使の市町村に行くと、その選手のカードが出やすいっていうこともないです。カードは年に3、4回入れ替えてます。1回目はその年バージョン発売のとき、これはキャンプの写真ですね。で、WE LOVE HOKKAIDOシリーズで20種類くらい追加があって、バージョン2はシーズン中のもの。それからレジェンドシリーズでまた20種類くらい追加があって、7、8月にバージョン3のものが出ます。だから全選手を切り替えるのが年3回。全体には2、3ヶ月に1回、切り替えてますね」
1人の選手で23回応募した人も
「分母が小さいので買って下さる方があきないように、どんどん入れ替えて楽しんでいただくことが大事だと思っています。買って下さる方には何通りかの楽しみをあげたいなといつも思っていて、一つは未開封の何が入ってるかわからないものを開けたら好きな選手が出るかもしれないというワクワクですね。もう一つは開けたら中に必ずホームラン賞かヒット賞かポイント券が入っていて、その次のアクションが起こせる。例えばホームラン賞なら去年までならバインダー、今年はホームラン賞じゃないともらえない7選手のフレームに入れた写真とか。ヒット賞はあなたの好きな選手のブロマイド。カードはたとえ知らない2軍の選手が入っていてもヒット賞が出ればあなたの好きな選手をどうぞ。これも全選手に対応してるので毎月すごい数のご応募があって、写真を選んで送ってます。ヒット賞も多い方は去年でいうと1人の選手で23回応募された方がいて23種類のブロマイドをお送りしました」
「その方、同じ写真もらっても嬉しくないと思うんです」。谷川さんはサラッと言われるけど、その23種類を選んで対応してるのは彼女1人なのだ。自分で自分の首を絞めてるというか、どんどんハードなほうへ行っている。野球カードの虫だ。このファイターズ愛、疑いがない。そうそう、「去年泣いたことがいっぺんだけありました、谷元圭介選手がトレードに出されたとき」だそうだ。いや、僕は正直、本社へ行ってこんなすごい人が出てくるなんて思いも寄らなかった。谷川さん、しびれたよ。
※もちろん玉井大翔カード(2018年バージョン1)を掲載させていただく。玉井は4月30日のロッテ戦4回裏、ロドリゲスの後を受けて登板、満塁を背負って中村奨吾に2点タイムリーを喫した。負けるな玉井!
※「文春野球コラム ペナントレース2018」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/-/7226でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。