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 小霜さんに言われた、忘れられない言葉があります。「小西はね、三角形の上を切って台形にしてからのろうとするんだよ。でもね、三角形の上にのるほうが、ぐらぐらするけど高い景色が見えるんだ」と。危なくても、足元がぐらついても、誰もやったことのない高みにいかなければ新しい風景は見えないことを教えてくれた貴重な言葉です。

 もう小霜さんはお亡くなりになりましたが、いまも自分が守りに入りそうになると、「あっ、僕はいま台形にのってるな」と師匠の言葉を思い出します。今まがりなりにも僕が仕事ができているのはすべて小霜さんのおかげです。

 

大人気店「挽肉と米」はどう生まれたのか?

――そんな三角形のうえに立つような挑戦といえば、小西さんがコンセプト開発・ブランディングを手掛けた「挽肉と米」はこれまでになかったタイプのハンバーグ店で、いま大人気ですよね。

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小西 「挽肉と米」は「山本のハンバーグ」の山本昇平さん、LAMP Inc.代表・清宮俊之さんと僕の3人で立ち上げたプロジェクトですが、これもハンバーグと人生のあいだで、「どうすれば本当においしいハンバーグ店ができるのか?」というシンプルな課題を突き詰めて考えました。

 ハンバーグのまわりにある不満、「食べていくと冷める」「量が多すぎて女性や少食の人は残しがち」「ライスが美味しくない」「つけ合わせのミックスベジタブルっていらなくない?」「サイズが大きくて食べにくいよね」「実はお味噌汁が欲しい」「最後までソースの味が同じで単調」といった隠れ不満、隠れニーズを丁寧に洗い出していった。

 それらを全部解決するアイデアとして行き着いたのが、「挽きたて、焼きたて、炊きたて」という「3たて」のコンセプト。それを実現するため、例えば270gのハンバーグを90g3つに分け、目の前で炭火焼にして順次出していくとか、ご飯も20分おきに炊きたてを用意するとか…、コンセプチャルかつ具体的な体験アイデアで解決してブランディングしていきました。

――少量ずつ焼きたてを食べるのは、シンプルだけど驚くほど美味しかったです!

「挽肉と米」渋谷店にて

小西 よく飲食店関係の人からびっくりされるんですよ。「こういうお店、ありそうでなかった」「どうやって閃いたんですか?」と。でも僕らからすると、思考ツールで不満をつぶしていった必然から生まれたアイデアで、魔法でもなんでもない。

――しかもクリエイティブなだけでなく、小西さんは常にビジネスとして「儲かる」ことも強く意識されていますね?

小西 さほど儲からなくとも尊い仕事をされている方々は沢山いるので、そういうスタンスにはもちろん敬意を払っていますが、僕自身が仕事にコミットするさいは「きちんと儲かる仕組みをデザインすること」を重視しています。「儲からないと、未来はない」という考え方です。

 なぜなら、きちんと利益が出ないと、そこに心血を注ぎ込んだ関係者全員が傷ついてしまうからです。およそこの世の中で、赤字を垂れ流したまま自分の身銭をきって続けられることなんてまずない。