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柳田も絶賛する江川の打撃センス

「打球がエグイ。放物線を描いてスタンドに入っていく。江川さんのような打球が本物の長距離砲なんですよ。僕は中距離バッターですから」

 柳田は以前から江川の打撃を、結構本気で絶賛しまくっている。

 思い返せば、入団したての頃の江川は柳田ばりの規格外のフルスイングをしていた。当時の秋山幸二2軍監督が英才教育を施して18歳新人を4番打者で起用し続けた。2年目で1軍デビューを果たすと、プロ初安打は西武のエースとしてバリバリだった松坂大輔から放った。プロ初打点は西口文也からマーク。本拠地デビュー戦では広島の黒田博樹に2点タイムリーをお見舞いした。将来はとんでもない大砲になるはずと期待に胸膨らませたファンは数えきれないだろう。

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 だけど1軍にはなかなか定着できなかった。そして今に至る。

 性格が仇という声を聞く。優しすぎる。誰かを押しのけて自分が前に出るタイプではない。子供の頃からスーパースターとして生きてきたプロ野球選手、特に高卒入団のドラフト1位に限れば、かなり珍しい部類だ。

 だけど、江川はとにかく実直。それが彼の良いところだ。

 今季は開幕1軍を勝ちとった。3月31日のオリックス戦では今季最初の打席で二塁打を放っている。しかし、その後は出番に恵まれず、4月19日に出場登録抹消されていた。成績は2打数1安打だった。

 ファームに合流して5試合目でのサイクル達成だった。その時点までの成績は18打数9安打で打率.500、3本塁打、7打点。たとえファーム行きが決まっても気持ちを切らすことはない。それが江川智晃という男だ。

「俺はやれる」。僕らは分かっている。チームの首脳陣にだって伝わっているはずだ。プロの世界だ。余計な言葉はいらない。打ち続けることが強烈なメッセージとなるのだ。

「優しすぎる」性格の江川 ©文藝春秋

 ところで、なぜNPBは「記録」をもっと大事に取り扱わないのだろうか。公式サイトでも記録関連は見つけづらいし、マニア心をくすぐる項目はきわめて少ない。2軍の記録に関しては特にそうだ。

 ファームとはいえ公式戦である。「記録」はファンが楽しむための重要ツールではないのか。メジャーリーグを参考に今後改善を進めてほしいと願う。

 数年前に、2軍戦取材の際にウエスタン・リーグのサイクル安打達成者一覧の資料を手に入れていたので、ここにまとめてみた。ネット上を探し回ってもなかなかお目にかかれないので、野球ファンの皆さんに喜んで頂ければ幸いです。

 

【動画】4月21日の日本ハム戦、柳田悠岐がサイクル安打を達成

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