野球とは記録を楽しむスポーツでもある。
今日5月3日、私は千葉に来ている。ZOZOマリンスタジアムでの取材はいつぶりだろうか。ビジターに行く機会は滅多にないが、今回は内川聖一2000本安打達成の瞬間をこの目で見るためにやって来た。
生みの苦しみと戦うキャプテンは「自分の弱さを感じていますよ」と、険しい表情で呟く。でも、金字塔は目前だ。果たして本稿掲載日が「Xデー」となるのか。それとも4日からの地元福岡3連戦へ持ち越されるのか。
2000本安打のように長い年月をかけて積み重ねられた記録はどれだけ優れた才能の持ち主だとしてもそれだけで到達できるものではない。人並み以上の努力の継続が必ず存在する。だから、それは尊い。
柳田に続いて二軍でも達成されたサイクル安打
一方で1つの試合から大記録が誕生する可能性もあるのも野球だ。その瞬間に同じ場所に居合わせることの幸せ。たとえ小さな「可能性」だと分かっていてもちょっと期待して、ワクワクしながら球場へと向かう時間はいいものだ。だから、生観戦はたまらなく楽しい。
4月21日、プロ野球史にまた1つ快記録が刻まれた。柳田悠岐外野手が日本ハム5回戦(札幌ドーム)でサイクル安打を記録したのだ。
当日はタマスタ筑後でファーム戦を取材していたので現地で目撃することは出来なかったが、スマホで速報を見た時はつい声を上げてしまった。それなりに長い間スポーツライターなどという仕事で野球と接すると、悲しいかな滅多なことでは驚かなくなってしまっている。だけど、今回はサイクル安打だ。プロ野球史上65人目、70度目。じつはノーヒットノーランよりも希少な記録なのだ(78人・89度/完全試合含む)。だから、本当にたまげた。
まさかと最初は疑った。ちょうど1週間後の28日にまたもソフトバンクから、サイクル安打達成者が生まれたのだ。江川智晃外野手がナゴヤ球場で行われたウエスタン・リーグの中日8回戦で成し遂げた。初回の第1打席でレフト二塁打を放つと、第2打席ではライトへ流し打って三塁打、第3打席もライト前へシングルヒットを放った。4打席目は凡退したが、7回の第5打席でレフトスタンドへ本塁打を運び、これで見事に“快挙”達成となった。
1軍戦と2軍戦を同列に扱うなとお叱りを受けるのは承知の上である。だけどスゴイものはスゴイ。チームも20安打の猛攻を見せて12-1で圧勝し記録に花を添える形になった。
私はその日、京セラドームに居たので、またも「球史の証人」になり損ねた。ちなみに、その日のナゴヤ球場の観衆は1,716人。本当に羨ましい。とりあえず自分の目の前には柳田がいたので「江川がサイクル安打を記録したらしい」と声をかけると、「江川さん凄いですもん。打ちますよ」と笑顔で返してきた。