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相手があってこそのスポーツだから

 その日から私は変わった。

 教わること、教えられることに年齢は関係ない。小学生でも師は師である。

 間違いなく私はその日から変わった。変わったというより、戻ったのかもしれない。私も若い頃、子供の頃は好きなチームと好きな選手は違っていたこともあるし、好きなチームに求めるものは必ずしも勝利ではなかった。

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 すばらしい試合が実現するのもすばらしい相手があってこそ。切磋琢磨する仲間、ライバルがいてこそ。きれいごとなんかではない。真実である。

 だからいま、私はいろんなチームに好きな選手がいる。もちろんカープを応援しているし、負けたら悔しいし、へこむ。温泉にでも行かなければ耐えられない気持ちにもなる。それで先日、TBSラジオならびに文春野球に迷惑をかけてしまった。もうしわけありませんでした。またあらためてお詫びはさせていただきます。が、それでも彼と出会う前の私とは違う。悔しくても、へこんでいても、その中身が違う。なぜなら相手のチームにも好きな選手がいるからだ。決して陰惨な気持ちや攻撃的な気持ちにはならない。

 そして、彼に出会ってすべてのチームに興味を持つようになった私は、テレビやラジオの中継もカープ戦以外の試合も見るようになった。いや、前からカープ戦がなければ見てましたよ、聞いてましたよ。でもカープ戦がやってたらよほどのことがない限りほかの試合中継にチャンネルを変えることはなかった。でもいまはカープ戦を見ながらほかの試合も見るようになった。試合展開によってはカープ戦より長い時間、ほかの試合を見ていることもある。

 長々となにを書いているのかというと、そのおかげで私は衣笠さんの最後の解説を聞くことができたのです。衣笠さん最後の解説は巨人対DeNA戦。その日は同時間帯にカープの試合も行われていたので彼との出会いがなかったら衣笠さんの解説を聞くことはなかったのです。

 絞り出すのもやっとという声でした。

 努力。尽力。そしてどんなときも焦らず。あわてず。責めず。ほがらかに。絶対に忘れませんし、たいせつにします。しみじみするのは自分ひとりの時間にすればいい。私もジャニス・ジョプリンのサマータイムを高校生のときからずっと聴いています。生きるということに後ろめたいことなんかない。つらくても前向きに。つらいときこそ立ち上がって。痛いときにはがまんして。自分が自分であるために。

 衣笠祥雄様。ありがとうございました。

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