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「怒りで震えが治まらなかった」13歳の愛娘が自殺…残された父の悔しさ、彼女を苦しめた犯人の正体

「怒りで震えが治まらなかった」13歳の愛娘が自殺…残された父の悔しさ、彼女を苦しめた犯人の正体

『事件の涙』より #9

genre : ニュース, 社会

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「お母さん お父さんへ これを読んでいるという事は、私が死んだって事ですね」――2018年8月に電車にその身を投げ、亡くなった永石陽菜(当時13歳)さん。中学2年生の彼女を何がそこまで追い詰めたのか? そして残された遺族の思いとは? ジャーナリストの高木瑞穂氏と、YouTubeを中心に活躍するドキュメンタリー班「日影のこえ」による新刊『事件の涙 犯罪加害者・被害者遺族の声なき声を拾い集めて』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

電車に飛び込み、わずか13歳で命を絶った永石陽菜さん(写真:筆者提供)

◆◆◆

「これを読んでいるという事は、私が死んだって事ですね」

「ただいま人身事故が発生しました」

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 2018年8月28日、駅のホームから線路内へ飛び込み自殺を図ったのは永石陽菜(当時13歳)、中学2年生の少女だった。

 陽菜の友人(19歳)は、この日を忘れもしない。

「たまたまバイトの帰りで、車でお母さんが迎えに来て、車に乗ったとき陽菜ちゃんが飛び込み自殺で亡くなったって聞いて。正直、半分嘘だと思っていて、状況がつかめなくて」

 2歳年下の陽菜とは、何らかの理由で学校に行くことができない者たちが集うボランティア団体で知り合った。不登校の末に流れ着いたという、同じ悩みを共有しあえるからなのか、2人はすぐに打ち解けた。実は彼女も当時、自殺を考えていた。だが、いざ駅のホームに立つと、悲しむ両親の顔が思い浮かんで踏みとどまり、今がある。もちろん、時間を巻き戻すことなどできはしない。ただ後悔だけが残っている。

「状況を知っているからこそ、無理やりにでも陽菜ちゃんのそのバリアを破って、少しずつでもいいから心を開いてもらって話を聞いてあげて、逃げ道を作ってあげたかった。気づいてあげられなくてごめんなさい」

 何があったのか。どれほど追いつめられていたのか。陽菜の胸中は友人さえも知らなかった。

 夏休みも終わりに近づき、暑さはずいぶん弱まったあの日、陽菜は自室の机に、両親に宛てた便箋2枚の遺書を残して家を出た。

 

〈お母さん お父さんへ これを読んでいるという事は、私が死んだって事ですね〉

 遺書は、どこか他人事のような書き出しで始まる。しかし、なぜ自殺したのか、電車のホームに飛び込んだのか、その理由ははっきりと書かれていた。

〈最後まで迷惑かけてごめんなさい。ずっと言っていなかったからここでいうけど、中1の時、学校に行かなくなったのは、部活が理由です。ずっと部活で仲良くしてた子に無視されたりしたのは悲しかったし辛かった。LINEのステータスメッセージとかでわるくいわれるのも全部私がわるいくせにおちこんで悲しんだ。先輩ともめたりした時も、だれもたすけてくれなかったなって思う〉

 後半は、自責の念に駆られる少女の、心の叫びだ。

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