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廣岡大志は、まだまだ物足りない

――では、カギを握る打撃陣について、ここまではどんな印象ですか?

真中 今年はかなり厚みを増したけど、青木(宣親)をはじめとして、雄平、バレンティン、坂口(智隆)たち主力選手も30代半ばを過ぎる世代だから、この間に若手打者を育てたいところなんだけどね、本当は。……暗い話ばかりだよね、今回(笑)。

――いえいえ、今の真中さんの心境を包み隠さず披露してください。

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真中 うん、正直に話します(笑)。ベテラン選手が多くなってきている打撃陣の中では、やっぱり山田哲人にかかる期待は大きいよね。でも、山田は多くのプレッシャーの中でよく頑張っていると思いますよ。「自分がやらなければ」という思いが空回りすることもあるけど、そういう意識が芽生えたという時点で、すでに成長を感じますね。

――打撃陣では「若い力の台頭」は見られませんか?

真中 個人的にはドラフト1位の村上(宗隆)クンは楽しみにしています。「早く一軍で使え」という声もあるけど、育成には段階というのがあるんですよ。プロに入ってキャッチャーからサードにコンバートされたばかりだし、打撃でもプロの投手のスピードに慣れている時期だから、今すぐ一軍に上げて中途半端になるぐらいなら、打撃陣の層が厚い今のうちにファームで経験を積ませた方がいいよね。でも、雰囲気はある選手なので、夏以降に出てくる可能性もあるよね。

――前回、話に出た廣岡大志選手については?

真中 正直言えば、まだまだですね。打撃も守備も一軍半レベル。今のヤクルトだから使われているというのが現状だと思いますよ。守備面ではちょっとした気配りだったり、走塁では細かい判断だったり、物足りない点が目立ちますね。期待の打撃では半速球には反応できても、力のあるストレートにはヤマを張っていても一発で仕留めることができない。

――前回とは一転して、廣岡選手に対しては厳しい評価が続きますね。

真中 期待しているからですよ。ただ、彼はまだ3年目ですからね。厳しく接しても、まだまだ成長しますよ。その一方で、廣岡が台頭してきたことによって、5年目の西浦(直亨)に、「廣岡に負けないぞ」という意地を感じるし、中堅選手たちにとってのいい刺激になっているのは大きな収穫だと思いますよ。

4月までの戦いぶりを語る真中満氏 ©長谷川晶一

「真中的4月のMVP」は坂口智隆!

――不動の正捕手として目されていた中村悠平選手に代わって、ルーキーの松本直樹選手や、2年目の古賀優大選手がスタメン起用されましたが、この意図はどう見ていますか?

真中 相手チームの目先を変えるという効果はあると思いますよ。ただね、投げるのはピッチャーだから。中村のリード通りに投げられない投手にも問題はありますよね。今はどうしても、「配球がマンネリだ」とか、中村に対する批判が目立つけど、彼だけを責めるのはかわいそうですよ。

――2015年のリーグ制覇のときには、中村選手の存在が大きかったわけですからね。

真中 もちろんそうですよ。中村のスローイングであったり、リードのおかげで勝てたのは間違いないですよ。まぁ、現状はチームとしての結果が出ていないのでキャッチャーが責められるのは仕方がないけど、彼をカバーするべく、投手陣がもっと奮起してほしいというのが、正直な僕の気持ちですね。

――苦しい戦いが続いていますが、「真中的4月のベストゲーム」はどれでしょう?

真中 先発の石川(雅規)を早々に諦めて逆転した試合があったでしょう。

――4月7日の神宮球場、15対8で巨人に勝利した一戦ですね。この試合では二番手の風張投手がプロ初勝利、廣岡選手が5打数5安打を放ちました。

真中 そうそう、その試合。この試合こそ、さっき言った「今のヤクルトができる理想的な勝ち方」ですよ。取られても取り返す。大量援護で投手の負担を減らしながら、若い投手に実戦を通じて経験を積ませる。……でも、なかなかこんな試合はできるものではないんですけどね(笑)。これほどの試合は無理としても、打線が投手の負担を減らしてあげるような展開で勝ちを拾っていく。これしかないよね。

――最後に、真中さんが選ぶ「4月のMVP」は誰でしょうか?

真中 坂口(智隆)ですね。コンスタントにヒットを量産しているし、ファーストにコンバートされて、エラーもあるけど無難にこなしています。僕も現役晩年にファーストを守ったことがあるけど、本当に大変だったから。バッティングに関しては何も問題はないよね。

――真中さんが、監督として今年のチームを率いていたとしたら、どうやって5月以降のペナントレースを乗り切っていきますか?

真中 ……耐えて、耐えて、やりくりするしかないかな。暗い話ばかりだけど、今のところで言えば中尾(輝)が明るい希望の光だよね。チームを立て直すには時間がかかるものだけど、「3年後に勝てばばいい」とは言えないわけだから。神宮球場に駆けつけてくれるファンの人のためにも、全試合を全力で戦わなければいけない。厳しい試合が続く中で、あきらめないで戦うしかないですよね。

構成/長谷川晶一

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