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日本ハム・玉井大翔の活躍で思い出す盛田幸妃さんの言葉

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/05/17
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 5月半ば、私が驚いたのは玉井投手はもう昨年の半分の試合を投げていたこと。

 ファイターズには「たいしょう」が二人います。一人はご存知、不動の4番・中田翔選手。いつの頃からか年下のチームメイトからは名前ではなく「大将」と呼ばれています。それはマスコミやファンにもどんどん広まり、もう私はお寿司屋さんで他の誰かが「大将!」と呼べば頭の中にはまず中田選手の顔と登場曲が浮かぶくらいです。

 そしてもう一人が、玉井大翔(たいしょう)投手。社会人・新日鐵住金かずさマジックからドラフト8位で入団した2年目の玉井投手、今年26歳。今シーズンの終わりくらいにはお寿司屋さんで「大将!」と誰かが言ったら、私の頭の中は「中田選手」か「玉井投手」かどちらか迷うようになっているかもしれません。そのくらいの活躍ぶりです。

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北海道佐呂間町出身の2年目・玉井大翔

どこで投げるか決まっていない、いざという時に頼りにされる

 佐呂間町出身、旭川実業高校、東農大オホーツクと大学まで北海道で過ごした道産子。高校3年生の時に出場した甲子園では登板機会はなく、ルーキーイヤーの昨年、初勝利が甲子園というラッキーボーイでもあります。その試合も含めて昨年は24試合の登板でしたが、今年はもう既にその半分の12試合にすべてリリーフで投げています(5月15日試合終了時点)。しかもどこで投げるか決まっていない、いざという時に頼りにされる、昨年までで言えば現中日ドラゴンズの谷元投手のような存在と言ってもいいでしょうか。試合数で言えばもっと投げている投手はいますが、まだ5月なのにそのピッチングの中にファンの心に深く刻まれた試合がいくつかあることからも存在の大きさを感じます。

 例えば、4月17日の東京ドーム・ライオンズ戦。先発の上沢投手が源田選手への頭部危険球で3回途中で退場したあの試合。この時、急遽登板したのが玉井投手でした。後で聞けば、あまりに急だったので裏では「玉井ーーーー! 玉井ーーーーー!」と探され、デッドボールの瞬間にはまだ靴紐も結んでいなかったとか。ブルペンでは5、6球、後はマウンドで気持ちを整理せよ。

 その時、セカンドにいたベテランの田中賢介選手が「ほんとゆっくりでいいから、時間はどれだけ使ってもいいから」と声をかけ心を落ち着かせてくれたそうです。そして、1アウトからの登板の玉井投手は丁寧に、浅村選手をバサッ、山川選手をバサッ、山賊2人をきっちり抑えたのでした。

 次に、5月11日、福岡のホークス戦。前夜の京セラドーム・バファローズ戦は延長戦。12回の裏、あと一人というところでまさかの送球ミスで敗れたファイターズ。この悪夢に気持ちも体もくったくたの移動試合、またもや襲い掛かる延長戦……。10回の裏に投げたのは玉井投手でした。鷹を見事に捕えたその投球に応えるかのように11回の表、レアード選手がHRを打って勝ち越し! さぁ、裏は誰が投げるのか??

 わ! 玉井投手なんですね! この緊張感たっぷりの中、イニング跨がせるんですね、栗山監督! まぁ、それで抑えちゃうから素晴らしいんです。玉井投手、今シーズン1勝目の夜。前日の嫌な雰囲気も遠い昔の記憶に変えてくれた神々しいピッチングでした。

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