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元・巨人ファンが球場で目撃した「岡本和真・吉川尚輝」の底知れぬ魅力とは?

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/05/18
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球場で驚愕した岡本和真のフルスイング

 私が東京ドームを訪れた今年の4月13日、岡本の豪快な空振りにスタンドから「おおっ!」とどよめきが起きた。

 このひと振り、ひと振りが明日の巨人の血肉になっていく――。そんな予感を抱かせる、夢のある光景だった。「お前の空振りを見に来たんだ!」。そんなファンの声が聞こえてきそうな寛容な光景だった。

 勝手に雰囲気に浸っていると、岡本が高いフライを打ち上げた。レフトフライか……と思いながら打球を追う。しかし、フライは一向にフィールドに落ちてこず、そのまま左中間スタンドに飛び込んでしまった。

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 私はその瞬間、岡本和真は打球まであまのじゃくということを知った。

入場料を払う価値のある吉川尚輝のスピード

 一方、吉川尚を初めて見たのは、中京学院大4年時の大学選手権でのことだった。

 プロのスカウトのなかには、こんなことを言う人がいる。

「いい選手はわざわざ探さなくても、自分から視界に飛び込んでくるものなんだよ」

 吉川尚はまさにそんな選手だった。シートノックが始まる直前、一塁側ベンチの前でキャッチボールをしている選手に何気なく目が止まる。背番号を見ると「7」。その後も、ことあるごとに背番号7の姿が視界に飛び込んでくる。その選手こそ、吉川尚だった。

 目に止まるのはたまたまではないと私は思っている。吉川尚は公称177センチと野球選手としては決して大きくない体ながら、ユニフォーム姿がとにかく映える。とくにベースランニング姿やゴロをさばく姿は見惚れてしまう。カメラを持っていれば撮りたくなる、そんなフォトジェニックな選手なのだ。

 後に意外なことを知ったのだが、当時の吉川尚は送球面に不安を抱えていたという。リーグ戦で送球エラーを犯し、それ以来、スローイングがしっくりきていなかったのだ。

 だが、大学選手権という晴れ舞台、それも初出場にもかかわらず、吉川尚はその試合中に本来のスローイングを取り戻したという。その天真爛漫なプレー姿は、多くの大学野球ファンを虜にした。この大会で、中京学院大は初出場初優勝を飾ることになる。

ユニフォーム姿がとにかく映える吉川尚輝

 東京ドームで見た吉川尚も、大学時代のように強烈な光を放っていた。ゲレーロが三塁線を抜く強烈な打球を放つと、一塁ランナーだった吉川尚は肉眼で追うのが難しいほどのスピードでダイヤモンドを駆け抜け、一気にホームまで戻ってきてしまった。

 私はしばらく余韻のような動悸がおさまらなかった。このワンプレーだけで、入場料を払う価値があると思った。

 大学時代の取材対応は伏し目がちで口数も多くはなかった吉川尚だが、最近インタビューした際もその印象は変わらなかった。プレーは派手なのに、言動は地味。そのコントラストが巨人ファンから愛されることを願ってやまない。

 テレビ地上波での生中継が年間数えるほどになり、一昔前より巨人ファンの数は明らかに減っている。東京ドームは連日満員が続いているが、「巨人」が世間の公用語だった時代はもうはるか彼方へと去ってしまった。

 「時代が変わった」といえばそれまでだ。しかし、今の巨人に悲観している巨人ファンはあまりいないのではないか。元・巨人ファンですら強く惹かれるような魅力あふれる若者、それも一挙2人のプレーを存分に享受できるのだから。

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