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東北組と関西組の絶妙なハーモニーが“強い西武”を作ってる

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/05/23
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「おおらかさ」を感じる東北組

 さて、大阪桐蔭など甲子園の常連で名の通っている高校などは、多数の球団の目に触れる機会は十分ある。ところが、こう言っては失礼だが八戸大や富士大からこれだけの好選手が獲得できるのだから、周囲も驚いている。秋山の出身高校は横浜創学館だが「横浜や桐蔭(学園)に行ってたらレギュラーになってなかったと思うけど、創学館でそこそこできていたので(高校の)監督のルートで大学を選びました。でも、ほんとは(高校から)直接プロに行きたかったんですけどね」と。プロに入るためには有名校に行き、そこで目立つのが一番だと思うが、秋山の場合、高校、大学と有名校に進んでいたら、今の位置をつかめたかどうか。性格的な面から、ノビノビできた環境が今の秋山を作り上げたのかも知れない。

 いまや西武の不動の4番として数字を挙げている山川は、沖縄の中部商から富士大に進んだ。1年の時から4番を任されていたが、2年の時にある失敗を犯してしまった。「アップルダイエット」を取り入れ減量に挑戦したのだ。これは、朝と昼は普通の食事を摂り、夜はリンゴを1個だけ食べるもの。一カ月で12キロ減ったが「(打球が)飛ばなくなったので、すぐにやめました」と苦笑する山川。体型、体重も個性なので、無理に減量することも不要だろう。今は、新婚家庭でおいしいステーキを食べまくっている。数年前の新春トークショーで披露してくれたピアノの腕前、もう一度聴いてみたい。

学生時代、アップルダイエットで失敗した山川 ©中川充四郎

「アップル」といえば山川の1学年下で弘前実から富士大の外崎。実家がりんご農園を営んでいるので、本塁打を打つと「アップルパンチ!」と言うのがお約束になっている。体はそれほど大きくないが、大学時からパンチ力が魅力だった。内外野をこなし、チームとして貴重なユーティリティプレーヤーだ。

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 その1学年下が山川と同じ高校から入学してきた多和田。1年の時はスリークォーター気味で、タマのキレ、制球力とも抜群で「何で、高校の時にドラフトにかからなかったんだろう」というのが周りの共通の見方だったという。多和田も「自分でもあのころは良かったと思いますよ。でも、今のほうが全然良いですけど」とニヤリと笑う。5勝を挙げて、3、4月度のパ・リーグ月間MVPを受賞した手応えは十分のようだ。背番号「18」もぴったりハマっている。

この短髪も魅力の多和田 ©中川充四郎

 注目を浴びながら強豪校で厳しい練習を積んでプロの世界に入った関西組に対して、もちろん練習は厳しかっただろうが何となく「おおらかさ」を感じる東北組。ここで括ってしまうのは乱暴かも知れないが、ここまでの戦いを見ると、そのバランスの良さがチームの成績に表れているように思える。これも、大学卒がメーンの東北組、高校卒がメーンの関西組というのが絶妙のハーモニーをかもし出しているのではないだろうか。こんな見方をしてみると野球の面白さも倍増する。

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