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「宮国椋丞 26歳」プロ野球はエースになれなかったから終わりではなく、始まりだ

文春野球コラム ペナントレース2018

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プロ野球は「エースになれないから終わり」ではない

 巨人ファンが「菅野・澤村・宮国」の近未来先発三本柱を夢見てから、早いもので5年経過。新選手会長を務める菅野は名実ともに日本のエースとなり、11年新人王の澤村は先発で伸び悩み3年前にリリーフ転向、そして少年時代はダイエーホークスの斉藤和巳に憧れた宮国はどこでも投げる中継ぎとしてブルペンスタンバイしている。まさに三者三様の野球人生だ。

 毎年ドラフト時の野球雑誌やスポーツ新聞を見ると、どの球団も「未来のクリーンアップ候補」や「将来のエース候補」で溢れ、若者たちは「目標は2000安打」や「タイトル獲得」といった大きい夢を語る。でも、本当に主軸打者やローテの柱になれる選手は数十人に1人だろう。つまり、選ばれし野球エリートたちでさえ、そのほとんどはどこかの時点で夢破れ、挫折し、現実を生きることになる。俺らだって就職面接で語った青臭い将来のビジョンを、すべて実現できる人間なんてほんのひと握りなのだから。

 今の巨人は世代交代を推し進め、1軍メンバーの平均年齢も下がった。野手陣で数年前は未来のレギュラーを期待され、ついこの間まで“期待の若手枠”だった中井大介、立岡宗一郎、橋本到らも20代後半となり、後輩の吉川尚や岡本の陰に隠れがち。スポーツニュースで取り上げられることもほとんどない。だが、個人的には彼らアラサー軍団が、ここからどうやってプロの世界で生き残るか注目している。代打の切り札か、守備固めか、なんでもできるユーティリティプレイヤーか。

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 宮国だってそうさ。プロ野球はエースになれなかったから終わりじゃない、始まりだ。ほとんどの選手は夢見る頃を過ぎれば、チームの主役以外の居場所を見つけなければならない。現実の厳しさに押し潰されて消えるか? なにがなんでも生き残るか? 今ここで、自分ができることをやるしかない。格好悪くてもいい。そんなこと問題じゃない。

 5月23日の広島戦(ひたちなか)では、6点ビハインドの8回表に4番手として雨でぬかるんだマウンドへ。泥にまみれながら2イニングを無失点に抑えてみせた。

 そこにはもうひ弱と言われた、あの頃の背番号30はいなかった。

 野生的で大人になった宮国椋丞がいたのである。

  See you baseball freak……

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