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ストライキなら会社に損害を与えても「合法」

 ストライキと聞いて、年配の方はストライキが激しかった1970年代の国鉄闘争の体験を思い出すかもしれないが、若い人はほとんど実感が湧かないだろう。1983年生まれの筆者も、労働運動に関わるようになるまで、現実にストライキを目にした記憶はなかったし、消費者としてストライキを体験したことはいまだに一度もない。ストライキが違法行為だと勘違いしている人もいるのではないだろうか。

 改めて、ストライキについて簡単な解説をしておこう。ストライキをはじめとした団体行動には、様々な種類がある。就業時間中に全く仕事をしない全日ストライキもあれば、一定時間だけ仕事をしない時限ストライキもある。残業を一切しない、休憩を1時間取得する、休日労働を一切しない「順法闘争」もある。職場で座り込んだり、職場を訪れた利用者にボイコットを呼びかけたりすることもできる。

東京駅以外に設置されたジャパンビバレッジ東京管轄の自動販売機でも「売切」が続出。「順法闘争」を封じ込めるため東京駅に人員を集中させた結果、他の自販機でも補充が滞っている可能性がある

 そして、これらの行為はすべて「合法」だ。前回の記事でも書いたように、正当な団体行動は、民事責任を免除され、刑事処罰も受けないと労働組合法で定められている。

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 具体的には、人が足りないためにその日の売上が落ちたり、業務そのものが停止してしまったり、「あの会社はブラック企業らしい」と社会的なイメージが悪くなったりといった経済的な損害を受けても、会社は労働組合に損害賠償を請求することはできない。ストライキで生じた仕事の遅延などの責任を、後日出勤した際に取らせることもできない。ストライキの後始末も会社の責任なのだ。

 個人でこれらの行動を行えば、威力業務妨害罪・強要罪・名誉毀損罪・信用毀損罪などの刑事犯罪に該当する可能性があるが、労働組合の正当な団体行動であれば、これらの刑事責任も問われない。それだけ、労働組合には法律で強い権限が与えられているのである。

人員不足のブラック企業でストライキは絶大な影響力を持つ

ジャパンビバレッジ側に提出さしたストライキ予告書(黒塗り部分は、懲戒処分を受けそうになっている組合員の名前)

 ストライキは、労働組合に入りさえすれば、誰でも合法的に実施することができる。単に可能であるばかりか、ブラック企業と闘うための「武器」として、昔より威力を増していると言っても過言ではない。

 ストライキなどの団体行動というと、工場や交通機関などがイメージされ、職場の大勢が参加しないと効果がないのではと思う人もいるだろう。しかし、ブラック企業の多くでは事情が違う。職場が人員不足のまま、一人ひとりの労働者が長時間残業・休憩なしなどの過重労働を強いられており、労働者一人当たりへの会社の依存度が極めて高い。このため、数名が行動に参加するだけで、ブラック企業に致命的な影響を与えることができてしまうのである。

 実際、ブラック企業ユニオンの所属する総合サポートユニオンでは、去年や今年だけでも、飲食店や介護施設において、ストライキを通じて、賃上げや人員増加・残業時間の大幅削減など、労働条件の改善の成果をいくつも収めている。ストライキはいまでも、法律で保護され、全ての労働者に認められた強力な「武器」なのである。

 ブラック企業ユニオンでは、ジャパンビバレッジとの闘いを報告するイベントを5月6日に開催する。筆者もゲストとして発言するが、順法闘争やストライキを通じてブラック企業と闘ってみたいという人は、ぜひ参加してみてほしい。