たった1房の“ドケチ”デザート
経費削減を求めながら品質も向上せよと、いかにもワンマン経営者が言いそうなことだ。そうした経営幹部の理不尽な要求に嫌気がさして辞めたスタッフも数多いと柴山さんは語る。
施設にあるレストランの中で最も格式が高いのが最上階にある鉄板焼き店だ。カウンター席に座ると、正面の窓からは海が見え、個室も完備されているという。だが、鉄板焼き店は、ほとんど営業していないというのだ。どういうことなのか。
「主に理事長が使うときに店を開けています。もちろん利用者さんが時々誕生日パーティーを開くこともありますが、それほど多くありません。たいてい閉まっていますよ」
レストランの数が多いというだけで、食事内容も豪華ではないと柴山さんは続ける。
「ある日の食事で、デザートにみかんが出るとメニューに書かれていたことがありました。当然、みかんが1個出るのかと思っていたら、1房なんです。もう衝撃でした。月に40万も50万も払っている利用者さんに、たったの1房って……」
施設内で皮膚病が蔓延
とろみ剤の事例を見てもわかるように衛生管理もいい加減だという。
介護の際に使用するゴム手袋は、もったいないという理由で片手だけ着用するよう指示されたり、入居者ごとに手袋を交換する必要はないと命じられたこともあったそうだ。
夏や梅雨の時期は、下水の臭いが施設の1階に立ち込める。排水管に問題があるようだが、修理する気配はないという。
「ある日、玄関まで臭っていて、ピアノの先生が今日は雨だから(臭いが)凄いよね、なんて話したこともあります」
極めつけは、施設内で疥癬が流行したことがあるという。疥癬とは、ダニの一種が人の肌に寄生して激しいかゆみを引き起こす皮膚病である。
「多くの利用者さんが疥癬になって、それもずっと黙ってました。さすがにスタッフがいろいろ言うようになったら、施設も仕方なくアナウンスしたのですが、『気になったら対策してくださいね』くらいの感じで、全然対策を取らなかったこともありましたよ」