前財務官の神田眞人氏は、今は日本経済が「強く復活」するチャンスであるとしながらも、同時に、デジタル赤字や対日投資において、日本の課題は多いという。その内実を語った。

神田眞人前財務官 ©文藝春秋

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拡大が止まらない「デジタル赤字」

 最近の旅行収支の改善には目を見張るものがあり、まだまだ増える余地はあるのでしょうが、とはいえ、最近のオーバーツーリズム問題に如実に示されるように、外国人観光客の受け入れには、人手不足をはじめとする制約があるのも事実です。海外からの観光客は、日本経済の活性化や日本社会の国際化にプラスであるだけでなく、日本の文化や自然に親しみをもってもらえれば、日本の安全保障にも資するので、もっと増やしていきたいところですが、日本人が新幹線やホテルの予約を取りにくくなったり、物やサービスが高価になりすぎたという不満も聞こえるようになりました。したがって、旅行収支の黒字が、足元のペースで今後とも伸びていくとは限りません。

 

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 また、デジタル分野では、最近では「デジタル赤字」の拡大が注目を集めています(上の図表②参照)。この赤字分で、インバウンドの黒字分を食いつぶしています。いかんせん現状では、クラウドや検索サイト、オンライン会議等のプラットフォームのほとんどをアマゾンやグーグルといった外国企業が提供しています。クラウド・サービス、オンライン会議システムを使えば使うほど、そのコンピュータサービス利用料が、動画や音楽の配信を受ければ受けるほど、そのライセンス・著作権等使用料が、そしてインターネット広告の売買取引をすればするほど、そのコンサルティングサービス料金が、自動的に海外に流れていきます。なので、皆さんのスマホ環境を振り返れば容易に想像できるように、日本の企業活動や日々の私生活においてデジタル化が進展すればするほど、「デジタル赤字」が拡大する構造となっています。懇談会では、「エネルギー分野の赤字は解決策が思いつくが、デジタル赤字の拡大は解決策が見えない不安がある」との声まであがった深刻な問題です。