「女子御三家」とは、数ある日本の私立女子校の中で頂点に君臨する「桜蔭」「女子学院(以下適宜JGと表記)」「雙葉」の3校を指す。長い伝統を誇り、東大をはじめとする難関大学に多くの合格者を輩出。OGも各界で活躍している。
超名門校ゆえ誰もが知る3校ではあるが、メディアで内部の詳細が報じられたことはなく、その実態はベールに包まれていた。
本書では、そんな女子御三家各校の真実の姿が生き生きと描かれている。著者の矢野耕平さんは、二十数年間中学受験指導に携わってきた塾講師であり、これまで数百人の子どもたちを女子御三家に送り出してきた。
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――なぜ「女子御三家」をテーマに執筆しようと考えたのですか?
それは世間一般が抱いている各校のイメージと実際の姿に大きな隔たりがあると感じていたからです。
たとえば、桜蔭は「ガリ勉揃いの堅苦しい学校」、JGは「自由な校風で明るく活発な人物を形成する学校」、雙葉は「のんびりとした校風で、おしとやかなお嬢様を育成する学校」……。こういう学校像が俗伝されているわけですが、在校生や卒業生たちと接していると、果たしてそうだろうかと違和感を抱いていたのです。ならば、自身の手で女子御三家の実像を掘り起こそうと思ったのです。
わたしは塾講師ですから、女子御三家の卒業生たちの本音を引き出しやすい立場にあります。取材者の多くは彼女たちが小学生のときにわたしが教えていましたから。そして、卒業生たちに取材を重ねていくにつれ、巷で流布している学校像とはやはり違うということに確信を持ったのです。
――矢野さんは30人近い女子御三家の卒業生たちに直接取材。特筆すべきは、女子御三家各校の学校長や教員たちも登場し、それぞれの教育の独自性を熱く語っていることだ。3校の学校関係者の声が1冊の本に収められるのは初めてのことだという。
女子御三家はどの学校も「パワフルな女性」を生み出すという意味で一致しています。ただし、そのパワフルさは三者三様であり、教育の方法と校風も大きく違います。それが各校の唯一無二の魅力になっているのです。
本書からかいつまんで紹介すると、桜蔭は「勉強のみならず、さまざまな分野において吸収力に傑出した女性」、JGは「自己責任感の強い成熟した女性」、雙葉は「ときに『したたか』に感じられるほど処世術に長けている女性」をそれぞれ数多く輩出しています。