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女子校時代は性別が“消滅”する?

――実際、本書に登場する卒業生たちをみると、各校の違いがはっきりと分かりますね。

 個性豊かな人格を培う各校独自の「仕掛け」も、本書では具体的に紹介しました。

 たとえば、JGは校則がほとんど存在しません。校内の部活動や行事などの大部分は生徒の手に委ねられており、生徒たちは様々な経験を積む中で思い悩み、葛藤するのです。そして、自立心が芽生え、成熟していきます。桜蔭や雙葉にも、それぞれ独自の方法論があります。

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©平井さくら

――女子校の意義とは何ですか? 女子ばかりの集団だと「いじめ」などの問題もありそうですが。

 調べてみると、日本は「女子校だらけ」です。これは、私立中高一貫校が最も多く創られた明治期~大正期、国家体制として女子教育が軽視されていたからこそ、それに抗うかたちで民間の手で女子校が多く設立されたのでしょう。当時の創立者たちの志は、今も脈々と各校に受け継がれていると思います。

 いじめはどの学校にもありますよ。特に女子校では不可避でしょうね。女子御三家各校の中では、壮絶ないじめの話を聞いたのは雙葉のOGからです。でも、そのドロドロとした人間関係、軋轢でさえ彼女たちが成長するための仕掛けのひとつのように思えてくるのです。

 取材を重ねる中で、複数の卒業生たちから「女子校に通っていた中高時代は性別が“消滅”していた」なんて話を聞きましたね。たとえば女性に対して「かわいい」と言うときの意味は男性と女性では全く違いますよね。男性は主として「容姿が魅力的である」場合に用い、女性は「好感が持てる」「愛嬌がある」といった場合に用います。女性に囲まれている女性は男性目線を意識した外見的なものでなく、内面的なものをブラッシュアップしていくのです。女子教育の意義はこういうところにあるのでしょう。そういえば、女子御三家はどの学校も男性教員はごく少数。いま申し上げた女子教育の意味を考えればこれは頷けることです。

――最後に、塾講師として女子御三家の合格を目指す受験生へのアドバイスを。

 各校の雰囲気には強烈なカラーがあります。なので、まずは自分がその学校に合うかどうか、文化祭などに足を運んで直接確かめることです。

矢野耕平(やのこうへい)

矢野耕平

1973年東京生まれ。大手塾に十数年勤めたのちに、中学受験専門塾「スタジオキャンパス」を設立し、代表に就任。東京・自由が丘と三田に展開している。学童保育施設「ABI-STA」特別顧問も務める。大手塾時代は女子学院(JG)受験に特化したクラスの責任者を務め、7年間で約230名のJG合格者を輩出。とくに2006年度のJG入試では80名受験中55名合格という圧倒的な実績を記録した。著書に『カリスマ講師がホンネで語る 中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『iPadで教育が変わる』(マイコミ新書)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)がある。