ひやニキ そういうトンチキエピソードは山ほどあります(笑)。大学では、大道芸のサークルに入ったんですが、最初は同級生とはなかなか距離を縮められませんでした。
2年生になり、初めて仲のいい後輩ができたことで、少しずつ同級生とも話せるようになったんです。ある時、ほとんどしゃべったことがなかった同級生の一人が急に「今から服を買いに行くぞ」って誘ってくれて、全部服を選んでくれたんです。それまで僕は、いとこの女の子のお下がりとか、毛玉だらけのダッフルコートとか着ていたので、人生で初めて自分で服を買いに行きました。
──同じ時期にコスプレも始められたそうですね。
ひやニキ そうですね。大学2年の時に、少し周囲とコミュニケーションができるようになったのもあって、当時好きだった「東方Project」のコスプレを始めました。女性キャラばかりのゲームなので、最初から女装コスですね。
ターニングポイントは「恋人との別れ」
──最初からきれいに女装できたんですか?
ひやニキ だったらよかったんですけど(笑)。でも、当時のコスプレって、今みたいにXに投稿するためじゃなくて、ゲームの世界観を写真で表現して、仲間同士で楽しむのが目的だったので、別に顔も写ってなくていい、ぐらいな感じだったんです。
──「女性に対してのコンプレックスがあった」と語っていましたが、女装で彼女たちよりも綺麗になって見返したい、という思いもあったのですか。
ひやニキ 最初はただキャラを再現したいという思いだけだったんですけれど、SNS上に写真をアップするようになって、何回かバズった後にはそう思いましたね。「当時お前がいじめていた陰キャのさえないやつは、こんなに綺麗になってるけど、どんな気持ち?」っていう。
Xに2013年半ばからコスプレ写真を上げていったら、フォロワーはどんどん増えていきました。最初は「まあまあ見られるレベルの女装コス」くらいな感じでフォローしてくれていたんですが、一度メディアに取り上げられてバズってから一気に増えましたね。
──その後、ご自身が大きく変わるきっかけになったのは、いつごろですか?
ひやニキ 大学を卒業して社会人になったんですが、華々しい青春時代を送れなかったというコンプレックスがずっとありました。社会人になって初めてコスプレで出会った彼女ができたんですが「服がダサい」と、2年間言い続けられたりもして。その後も何人かつきあったのですが、あまり続かなくて。
ターニングポイントになったのは、1年間付き合った彼女と別れたことです。別れた原因が、相手にこっぴどく浮気されてしまったことだったんです。元々、付き合い始めたときも、前彼と被っているような相手だったんですけれど……。
それが本当に悔しくて「彼女を見返すぐらいいい男になりたい」と思うようになったんですが、方法がわかりませんでした。
──そうだったんですね。