「部員の1人が『(マスターベーションを)うまくできません。どうすればいいんですか?』と聞いてきたんです。私は『(陰茎を)貸してみろ。こうするんだ』と言い、肛門に指を入れたり、陰茎を触りました。……当時、私は、彼らの仲間だと思っていました」
9月11日、サッカーの強豪校・修徳中学校・高校(東京都葛飾区)の元教師で、高校男子のサッカー部の元総監督、吉田拓也被告(30)が、複数の部員に対する不同意性交や性的姿態撮影、児童ポルノ製造などの罪に問われている事件の論告求刑が東京地裁(矢野直邦裁判長)で開かれた。
起訴状などによると、吉田被告は男子部員を呼び出し、部員の性器を触ったり、肛門に指を入れ、前立腺を刺激し、マスターベーションを手伝うなどわいせつ行為を加えたという。さらにその様子を撮影しており、吉田被告のスマートフォンには逮捕段階で少年が映る100点以上の動画や画像が見つかっていた。被害にあった部員からは「総監督である吉田被告の要求を拒めば試合に出られなくなると思った」という証言もあったという。
吉田被告について検察側は「総監督という立場を利用した点は巧妙かつ、悪質。被害者の部員たちは他人に見られたくない動画を保存され、保護者たちも裏切られた」「理性に期待するのは困難だ」として、懲役12年を求刑した。
吉田被告側は、訴えられた事実を認めたが、わいせつ行為や撮影は同意に基づいていたこと、部員の体調管理が目的だったこと、悪ふざけをしたのは「体育会系のノリ」だったと、自己の性的好奇心を満たす目的としたわけではないなどと主張し、情状酌量を求めた。
「何回も裸にさせられた」「筋肉の撮影は定期的に」
先だって、8月19日と9月3日に行われた被告人質問の中で、吉田被告は修徳サッカー部の“異様”な性モラルを証言していた。
被害者は13歳から16歳の4人。このうち、最も被害が大きかったのがAくんだ。
始まりは21年12月、コロナ禍以降で初めての合宿だった。サッカー部OBが筋力トレーニングで成長した話がきっかけで、A君を含む5人ほどの部員の姿を吉田被告が撮影することになった。Aくんは「何回も裸にさせられた」と警察に証言している。
しかし吉田被告は「筋肉の撮影は定期的に行った。意気込みに面白い動画を撮ろうと言い、下ネタとおもしろい動画を撮影した」と証言した。
翌22年8月6日は、15人ほどの部員が参加した山梨県内での合宿中、多くの部員が吉田被告の部屋に集まっていた。その中にいたAくんが「マスターベーションのやり方がわからない」「教えてほしい」という話をし、吉田被告が方法を教えることになったと証言した。
「AVの動画を見るなどして、お互いに笑いながらふざけていました」とも証言しており、18歳以下の生徒にR-18の動画を見せていたことも示唆していた。