「紀州のドン・ファン」の自叙伝のある艶福家が、謎の覚醒剤中毒死を遂げた。発生から6年余り経った事件の裁判員裁判が9月12日から和歌山地裁で始まっている。和歌山県田辺市の会社経営者・野崎幸助氏(享年77)を殺害したとして罪に問われているのが、当時22歳だった新婚妻の須藤早貴被告(28)である。

 事件が起きたのは2018年5月24日夜。野崎氏は田辺市の自宅2階の寝室で、全裸のまま事切れていた。司法担当記者の話。

「直接証拠がない中、検察側は、須藤が『完全犯罪を企てた』として、事件前に覚醒剤の密売人と接触していた事実をはじめ、膨大な間接証拠と証人を準備している。対して須藤は罪状認否で『殺していないし、覚醒剤も飲ませていない』と訴えた。弁護側は“疑わしきは罰せず”の原則を強調し、無罪を主張している」

ADVERTISEMENT

無罪を主張している須藤早貴被告

「弁護側も、2人が『特殊な夫婦関係だった』こと自体は認めている」

 双方の主張が真っ向から対立する中、争いがないのは、野崎氏が致死量の覚醒剤を経口摂取して死亡した事実。そして、野崎氏と須藤が“金銭”で結ばれた婚姻関係にあったことだ。

 17年12月、須藤は知人を介して対面した野崎氏から熱烈に求愛され、18年2月に入籍した。

「検察側は須藤が『野崎氏の莫大な財産目当てで結婚した』としているが、弁護側も、2人が『特殊な夫婦関係だった』こと自体は認めている。野崎氏は月100万円の小遣いを渡す条件を提示し、須藤は東京暮らしを続けることを前提に、結婚を承諾したと」(同前)