些細ないことから感じる、深いすれ違い
いつバレるのかとハラハラしつつも、食の尊さを実感する非常に温かな作品だが、1巻からずっと気になっていたことがある。それは同じご飯を食べているのに、2人とも感動するポイントやアレンジが絶妙に異なるという点だ。
例えば、バランスの良い定食メニューを好むシュウくんに対して、晩酌が大好きなアヤちゃん。1巻ではシュウくんが「ニンニクキュウリ」のニンニクの濃さに戸惑うが、アヤちゃんはうまい! と絶賛する。その他にも、シュウくんは完成している料理をそのまま堪能するけれど、アヤちゃんは料理にネギを散らすなどちょい足しをすることが多い。些細なことかもしれないけれど、同じものを楽しんでいるようで実は違うという、深いすれ違いを感じるのだ。
2巻では「ロールキャベツとナポリタン」「サバ味噌とわかめとキュウリの甘酢和え」など、ミケのレシピがさらにパワーアップする一方で、そのすれ違いがより顕著になっていく。特に「海南鶏飯」では、ミケが蒸し鶏と揚げ鶏に加え、ジンジャーソース、スイートチリソース、ダークソイソースと本場さながらの一皿を振る舞うのだが……。
色々な組み合わせが楽しめる中で一つの味わいを楽しめることに幸せを感じるアヤちゃん。この何気ない食べる喜びの違いが、2人の恋愛観のすれ違いに繋がっていくとは誰が想像しただろうか。
美味しいだけじゃない、2人の献立から香り立つちょっぴり不穏なスパイスをぜひ堪能してみてほしい。