北朝鮮軍の特殊作戦部隊。装備の老朽化と燃料不足に苦しむ北朝鮮軍が頼みにする精鋭部隊だ。

 2020年10月、朝鮮労働党創建75周年の軍事パレードの際、朝鮮中央テレビのアナウンサーは特殊作戦部隊の戦闘員を「いかなる形の作戦や戦闘にも備えた一当百(イルタンベク=1人で100人に相当する力を持つ)の万能兵士」と激賞した。有事になれば、韓国の後方地域に浸透し、テロ・破壊活動を繰り広げる。

©AFP PHOTO/KCNA VIA KNS

 その部隊訓練を、金正恩総書記が9月11日に指導した。北朝鮮メディアが公開した写真には、秘密を保護するためか、詳しい訓練内容や装備は写っていなかったが、精鋭ぶりは十分に伝わってくる。

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 朝鮮中央通信はこの視察で計47枚の写真を公開した。兵士たちが建物の外壁伝いにロープを使って降下したり、小銃や対戦車砲を使った戦闘訓練を行ったりする様子が写っていた。

300人が筋骨隆々の肉体で「瓦割り訓練」...陸自の元空挺団長が解説

 朝鮮中央通信は、約300人規模の特殊作戦部隊兵士が上半身裸で金正恩氏と一緒に記念撮影した写真も公開した。組手やコンクリート様の板を使った「瓦割り訓練」でも、筋骨隆々とした上半身裸の姿を披露した。

 陸上自衛隊の第1空挺団長を務めた岩村公史元陸将は「北朝鮮軍は近年、食料やエネルギー不足に苦しんでいると伝えられていましたが、今年に入って戦車部隊やパラシュート降下部隊などの大規模訓練も公開しました。ロシアなどからの支援で一息ついたのでしょう。たくましい肉体を見せたのも、精鋭を鍛えているとアピールしたかったのでしょう」と語る。

 集合写真に写った300人規模の兵士の姿についても「1カ所で鍛える規模としては大きい方です。特殊部隊の育成には通常、3年かかりますが、どんどん育てているとも言いたいのだと思います」という。

©朝鮮通信=時事

 岩村氏は「北朝鮮が公開した写真を見る限り、初歩的な新兵訓練だったようです。それでも、精強な様子が十分伝わってきます」と語る。

 公開された写真には、4人1組で丸太を担いで歩く兵士の姿もあった。岩村氏によれば、米海軍特殊部隊(ネイビー・シールズ)も採用している訓練だという。「バランスを崩すと重い丸太を素早く運べません。お互いの力を補い合いながら、チームワークを鍛えます。各国の軍の空挺部隊や特殊作戦部隊が行う基礎訓練の一つです」(同氏)。

 手の内を明かさずとも、北朝鮮軍の特殊作戦部隊の実力は折り紙付きだ。