韓国軍にその実力を知らしめたのが、1996年秋に日本海側の江原道江陵市に北朝鮮軍のサンオ級潜水艦が座礁したことで始まった浸透事件だ。北朝鮮の乗組員26人が韓国に上陸、11人が集団自決を遂げたが、15人が逃走して南北軍事境界線を目指した。
韓国軍は同年11月5日の作戦終了までに、のべ150万人を投入して大掛かりな捜索を行った。逃走した北朝鮮乗組員15人のうち、13人が射殺され、1人が逮捕されたが、うち2人は境界線まであと20キロの地点まで迫った。
残る1人はついに発見できなかった。韓国側は死者12人、負傷者27人を出した。
当時、捜索にあたった韓国軍将校によれば、逃走した北朝鮮乗組員には特殊作戦が可能な工作員も含まれていた。北朝鮮工作員は山中を平均時速10キロで移動し、追跡する韓国軍兵士の額と胸を正確に撃ち抜いた。
米韓は1個師団を投入しないと北朝鮮の精鋭隊員に対応できない
射殺された北朝鮮工作員は、逃走途中に書いたとみられる、韓国のダムや発電所など重要インフラの位置を記したメモ用紙を所持していた。
岩村氏は「北朝鮮軍の特殊作戦部隊は有事になれば、レーダーに探知されにくいアントノフ2複葉機で低空から侵入し、韓国の後方地域に降下します。そこで数人でもテロや破壊活動を行えば、米韓連合軍は1~2個師団(約1万~2万人)を投入しないと対応できないでしょう」と語る。まさに「一当百」どころではなく「一当千」「一当万」の脅威と言える。
こんな頼もしい兵士に囲まれ、金正恩氏もうれしかったに違いない。万歳する兵士たちに向け、お得意の親指を立てる「サムズアップ」をしてみせた。
朝鮮中央通信によれば、金正恩氏は「訓練で汗を多く流してこそ戦争で流す血は少ないものである」と語った。
一方、「おごりと怯え」が透けて見える。写真には、そんな金正恩氏の周囲を、濃紺色の戦闘服にヘルメット、小銃で武装した兵士が固める様子も写っていた。