職を失い、彼女にもフラれた赤口誠はある日、「仏滅結婚相談所」の社長・仏滅清志郎と出会い入社することに。人を幸せにする崇高な仕事かと思いきや、その実態は嘘にまみれた“婚活難民”たちの引き取り場だった……!?

 WEBサイト「コミプレ」で連載中のコミック『仏滅結婚』(ヒーローズ)は、浅田有皆さんによる異色のヒューマンコメディだ。他の結婚相談所では引き取り手のない「負け組」婚活者たちが次々に登場し、読者の心を容赦なく揺さぶってくる。

 果たして人との出会いとは、結婚とは何なのか……。作者の浅田さんに作品について詳しく伺った。(全4回の1回目/コミックを読む

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「仏滅結婚相談所」に相談に来る人々 『仏滅結婚』より

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婚活パーティーが“パンドラの箱”に思えた

――まずは結婚相談所をテーマに選んだ理由を教えてください。もともとどういったイメージや印象があったのでしょうか?

浅田有皆(以下、浅田) 原稿作業中にYouTubeをよく流しているのですが、その時たまたま見た「婚活系YouTuber」にハマってしまって(笑)。そのYouTuberは婚活パーティーに行っては「こんなすごいのがいた!」「とんでもないやつばっかだ!」みたいなことをレポートしているんですが、その集まりが個人的にとても怪しい“パンドラの箱”のように思えて。

 結婚相談所を舞台に描いたら、そういう人たちの面白い出会いや人間模様が描けるのではないかと思って担当編集さんに相談しました。そしたらすぐOKが出ました(笑)。

――主人公の赤口が恋愛や出会いに対して抱いていた幻想が、仏滅結婚相談所での仕事を続けるにつれどんどん壊れていくところが面白かったです。浅田様にとっての恋愛や結婚のイメージはどのようなものですか。そのイメージはやはり作品の内容に反映されているのでしょうか。

「とんでもない会社に入ってしまったのかもしれない……」と絶望する主人公・赤口 『仏滅結婚』より

浅田 恋愛は衝動的なもの、結婚は日々の生活と努力、そして忍耐力ですかね(笑)。作品には知らず知らず反映されているのかもしれません。結局、結婚しても相手と自分はどこまでいっても他人ですし、恋愛感情だけで日々の生活はできません。それでも「この人と一緒に人生を歩みたい」と思えたらそれは素敵なことですよね。男女ともに底辺だったりドクズだったとしても、そう思える相手となら一生を添い遂げられるのではないでしょうか。

――一般的な恋愛と婚活はやはり違うのでしょうか。婚活をする上で一番大切なことはなんだと思いますか?

浅田 もともと自然な形での出会いやナンパ、相談所、マッチングアプリと、どんな形でも出会いは同じだろうと思っています。とはいえ、一般的な出会いは最初に「感情」があるのに対して、相談所の場合はどうしても「条件」が先にきます。恋愛であれば気持ちで突っ走ることもできますが、婚活となるとその人の経歴や経済力といったスペックを無視することはできません。

仏滅社長の台詞 『仏滅結婚』より

 そういうスペックを含めた“人間性”を見極めるのが婚活では大事なのではないでしょうか。ただ、仏滅結婚相談所に来る人たちは事故物件レベルの低スペックばかりなので、それを補う魅力がないと結婚は難しいですよね。